後継者不在の会社は売却が廃業より得なワケ 事業はもちろん雇用や取引も次代に残せる

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なお、この「のれん」の価値の計算にはいろいろな手法がありますが、最終的には買い手との交渉で決めるものであることを理解しておきましょう。

一方、廃業の場合には、この「のれん」はありません。会社が保有する土地や機械などの資産をいくらで売却できるかがすべてになります。実際には、値段がつけばまだ良いほうで、機械設備などは値段がつかないどころか、廃棄のために逆に費用が発生することすらあり、あまりお得な手段とはいえません。

売却と廃業では、税金が大きく異なってくる

また、M&Aによる売却と廃業では、税金が大きく異なってくる点も重要なポイントです。

たとえば、株式会社を売却するときにかかる税金は、株式の売却益に対して約20%の税金を支払うだけで済みます。一方、廃業の場合には、まず会社が保有する資産を売却した際に、約30%程度の法人税が会社に対してかかります。さらに、会社を解散していよいよ廃業の最終段階となったときに、個人が受け取る清算時の配当所得に対して所得額に応じて、約10〜50%の税金がかかることになり、2回の税金負担がかかることになります。

このようにM&Aによる売却と廃業とでは税金の負担が大きく異なっており、税務上はM&Aによる売却のほうが圧倒的にお得です。ただし、実際の税金の計算は、会社の状況や規模によって異なります。ここは税理士の出番となるでしょう。

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日本における年間の休廃業件数は、2015年約3万件、倒産件数は約8000件となっています。実は、自主的に休廃業する会社のほうが倒産してしまう会社の数よりも4倍以上も多いのです。

しかも、休廃業する会社のうち、黒字の会社が半数以上と予想されていますので、単純に考えると約3万社の半数に当たる約1万5000社は、引き継ぎ先が見つかれば存続できる可能性の高い会社ということになります。

黒字を計上しているということは、経営も良好な状態にあるということです。そのような会社が、年間1万社以上も人知れず消えていっている現状は、社会の大きな損失であるといわざるをえません。廃業によって社会から失われてしまう価値あるものを、次の世代に引き継ぎ、会社にかかわる人たちを幸せにすることができるのが、M&Aの特徴です。

高橋 聡 トランビ代表取締役

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たかはし そう / Sou Takahashi

長野県長野市出身。2001年、アクセンチュア株式会社入社。通信ハイテク本部にて、大規模システム開発プロジェクトに従事。2005年、家業であるアスク工業株式会社に入社。2010年より代表取締役(現任)。地方の中小企業の経営に携わる中で、取引先の後継者不足による廃業に強い危機感を持ち、2011年7月に日本初となる中小企業による中小企業のための事業承継・M&AマーケットTRANBI(トランビ)を創業。

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