後継者不在の会社は売却が廃業より得なワケ 事業はもちろん雇用や取引も次代に残せる
では、5つのメリットについて順に詳しく説明していきましょう。
① 従業員の雇用を継続できる
なんと言っても、会社を売ることのいちばんのメリットは、従業員とその家族を路頭に迷わせなくても済むということでしょう。長年、一緒に働いてきた従業員が廃業によって仕事を失うことは、経営者とてして苦しい選択です。従業員が若ければ再就職先を探すこともさほど難しいことではありませんが、50~60代のベテラン従業員が次の仕事を見つけることは困難です。
M&Aで会社を売ると従業員がリストラされてしまうのではないかと不安に思う社長もいるかもしれませんが、中小企業のM&Aは、安定した会社経営が目的であるため、会社の買い取り後に大規模なリストラを行って、従業員を解雇するようなことはめったに行われません。むしろ、買い手側は、買収後の安定した経営のため従業員が引き続き残ってくれることを重視しています。
また、買い手と譲渡契約を結ぶ際に、従業員の雇用継続を条件に入れることもできますので、契約によって一定期間の従業員の雇用を保証させることもできます。
廃業すると取引先に多大な迷惑をかけることになる
② お客様や仕入先などとの取引を継続できる
2つ目は、材料の仕入先や仕事の外注先、お得意先といった取引先との関係が、これまでどおり維持されるということです。もし、会社が取引先に対して部品などの商品を供給していた場合、廃業してしまうと、その取引先は継続して製品を作り続けるためには新たな仕入先を探す必要が出てきます。運良く別の仕入先が見つかればいいのですが、見つからなかった場合は、その製品の生産を中止せざるをえないなど、取引先に多大な迷惑をかけることになってしまいます。
一方、会社が取引先から何かを仕入れて商品を作っていた場合、その仕入先の会社は、それまであった売り上げがなくなるので、取引額が大きければ大きいほど、受けるダメージも大きくなります。売り上げが減る分をほかで補うことができればいいのでしょうが、できなければ取引先に迷惑をかけてしまうことになります。会社を誰かに引き継いでもらえれば、今までどおりの取引を継続することができるので、仕入先に無用な心配をさせずに済みます。
③ 技術やノウハウを次世代に引き継げる
3つ目は、技術やノウハウの伝承です。日本にはすばらしい技術やノウハウを持った中小企業がたくさん存在しますが、仮にそのような会社が廃業した場合、長年培ってきた技術やノウハウはその時点で途絶えてしまうことになります。実際、多くの中小企業の廃業によって、世界に誇れる多くの技術やノウハウが数多く失われており、これは日本社会全体の大きな損失になっています。
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