外国人労働者に新資格、安易な拡大に危うさ さらなる受け入れ増には課題が多い

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政府は2017年11月、技能実習制度の在留期間を最長3年から同5年に延ばしたばかり。さらに6月に閣議決定した「骨太の方針」に、外国人の就労を目的とした新たな在留資格の創設を盛り込んだ。具体的な受け入れ業種の決定はこれからだが、農業を含む重点5分野で、「特定技能」を持つ人材を2025年ごろまでに50万人超受け入れるという。新制度では最長10年在留が可能になるが、「移民政策とは異なる」として家族の同伴は認めない。

構造問題から目を背けるな

農業の実態に詳しい東京大学大学院の安藤光義教授は「新制度ができても、外国人労働者の増加は限定的ではないか」と指摘する。「日本の農家は家族経営が主体。実習生を受け入れている農家でも、外国人労働者をさらに増やすためには、経営者とは別に日本人の管理者が必要となるが、現状では確保が難しい」(同)。問題は結局、待遇の悪さを背景とした日本人の人材不足に行き着く。

「待遇の悪さをいとわない外国人労働者に安易に依存することは、日本の産業界が抱えている問題の先送りにしかならない」と、経済学の視点で外国人労働者問題を研究する慶応義塾大学の中島隆信教授は警鐘を鳴らす。労働集約型の産業は生産性の低さが課題とされるが、それが固定化されることになりかねない。

茨城県の農業従事者は20代の48%が外国人という現実がある(2015年)。外国人労働者を受け入れても、次世代の担い手不足は一向に解消しない。構造問題から目を背けない姿勢が必要になる。

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年10月から東洋経済編集部でニュースや特集の編集を担当。

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