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日本人から思考を奪う「国体の正体」とは何か 隷属状態からの脱出が日本の最重要課題だ

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  • 白井 聡 政治学者、京都精華大学教員
  • 國分 功一郎 東京大学大学院総合文化研究科准教授
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國分:それはイラク戦争についてもそうですね。最近イギリスはイラク戦争について膨大な量の報告書を発表しましたが、日本はわずかA4数枚の報告書だけで済ませています。第2次世界大戦についてもまともに責任を追及していません。関係者の責任を追及しないというのが日本のお家芸のようなものになってしまっている。

欧米へのコンプレックスとアジアへのレイシズム

國分:そこで白井君のビジョンを聞きたいのですが、日本国民はきちんと責任を取る近代的主体になるべきだと考えていますか。『国体論』は近代的主体を肯定しているように見えると同時に、そういう安易な解決策を拒否しているようにも見えます。この点についてどう考えていますか。

白井:それは結局のところ、どのような政治秩序を目指すべきかという話になると思うんですが、僕はあまり「こうあるべきだ」という理想がないんです。アメリカやヨーロッパではデモクラシーが理想とされていますが、彼らのデモクラシーが今うまく機能しているようには見えません。それではデモクラシーが無理だからといって、中国やロシアのように権威主義でいけばいいかというと、こちらにも多くの問題があります。

國分功一郎(こくぶん こういちろう) /哲学者。1974年生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。専攻は哲学。東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。おもな著作に『中動態の世界』(医学書院、小林秀雄賞受賞)など(撮影:恩田陽)

政治について研究すればするほど、それに期待することが少なくなりました。まあ大体において政治なんてろくなもんじゃない。

重要なのは、政治ではなく、国民が元気でいられるかどうか、です。国民に元気さえあれば、政治はろくでもなくても、それなりの秩序を形成できると思います。

たとえば、中国の人たちと話をしていると、彼らの中にナショナリズムと非ナショナリズムが共存していることがわかり、すごく面白いんですね。彼らは「共産党なんてろくでもない」と思っている一方で、「共産党しかない」とも思っている。それで自分は何をするのかというと、自分の商売を頑張る。こういう発想なんですね。

これは「自民党なんていいとは思わないけど、自民党しかない」として自民党を支持している日本国民とは似て非なるものだと思います。日本の場合は政治に対してすごくナイーブなんですよ。

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【『国体論』にあるひとつの答え】

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