真面目に働くだけの人に遠い投資家の儲け方 会社員は農耕採集民族、投資家は狩猟民族だ

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僕なりの表現で言い換えるなら、雇われ労働で生きるのは農耕的、投資で生きるのは狩猟的な生き方です。世界的なベストセラー『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』(ユヴァル・ノア・ハラリ著・柴田裕之)に興味深い話が載っていました。

それによると、人類は農耕採集時代より狩猟時代のほうが得られる食料の種類も量も多く、健康的で、余暇の時間も多かったと考えられているというのです。

農耕採集民族は、会社に雇われて労働するのに似ています。彼らが土地に縛りつけられて生きているように、労働者は会社に縛りつけられて生きています。農耕採集民族は土地から離れられず、気候の変化に文句を言うこともできませんし、害虫や病気の蔓延も黙って受け入れるしかありません。労働者も同じです。無能な経営者だろうと仕事に文句があろうと、その環境にうまく適応しながら、愚痴を言いながら、そこで黙って働くしかありません。

一方、狩猟民族は投資家の生き方です。どこに獲物がいるかを自分の知識や経験を頼りに探し求めて歩く狩猟民族の姿は、いつ芽が出るかわからない投資案件を自分の知識と経験を基に探し、そこに張って利益を得ていく投資家の生き方に重なります。狩猟民族も投資家も、予想を外す可能性はありますが、当たったときのリターンが大きい点も共通しています。

歴史的にみても、狩猟民族のほうが「稼ぎ」がよく、「余暇」も多かったという話は、現代の雇用制度が抱えている矛盾を突いているように思えてなりません。

ただし投資の世界でも努力は必要

ただ、投資家として生きるうえで誤解をしてはいけないのが、労働の価値は希薄化していっても、努力の価値がなくなるわけではない、ということです。

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ピケティ氏の理論が説明するようにおカネを儲けるには労働より投資のほうが効率的ですが、投資の意思決定をするためには、情報を集めてきて分析するという地道な作業の繰り返しが必要とされます。投資対象はこの分野でいいか、このコミュニティでいいかを選び、そこが信用できるのか、怪しいものではないのかを自分で勉強し、自分が理解できたと納得したうえで投資をしなければなりません。そして、リスクを背負うのはつねに自分です。

ビットコインで儲けた億り人(資産1億円超えを達成した投資家)も起業家も、「努力」によっておカネを儲けている点は普通の労働者と変わりません。自己責任が付きまとう投資の世界のほうが、楽はできないと思います。

正田 圭 投資家・TIGALA代表

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まさだ けい / Kei Masada

1986年奈良県生まれ。15歳で起業。インターネット事業を売却後、M&Aサービスを展開。事業再生の計画策定や企業価値評価業務に従事。2011年にTIGALAを設立し代表取締役に就任。テクノロジーを用いてストラクチャードファイナンスや企業グループ内再編等の投資銀行サービスを提供することを目的とする。2017年12月より、スタートアップメディア「pedia」を運営。

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