メイ政権、ブレグジットで閣内合意すら難航 穏健派に妥協し、強硬派閣僚が相次いで辞任

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EUの法体系からの完全離脱を企図した強硬派としてはのめるはずのない内容といえる。もちろん、EU予算への拠出中止、ヒトの移動の自由中止など強硬派の意に沿う論点も盛り込まれてはいるが、「完全離脱以外は離脱にあらず」という強硬派の主張からすればやはり距離はある。

また、EUからすると「金は払わないし、ヒトの移動の自由も認めないが財貿易は今までどおりにしてくれ」という英国の要求は、従来から批判してきたチェリーピッキング(いいところ取り)のそしりを免れないものである。ゆえに、すんなり受け入れられるかどうかは分からない。

この点は、上述したように、諸分野におけるEU規制やCJEUの関与を残していることをどの程度評価するかによるだろう。仮にこれをのめないとされた場合、交渉に残された時間は非常に限られてくる。穏健派と強硬派の双方にいい顔をしたことで交渉相手(EU)の立場がないがしろにされた部分はあったと言わざるをえない。

ちなみに今回の基本方針ではTPP(環太平洋パートナーシップ協定)への参加も表明された。しかし、英国独自の規則を作るサービス貿易部分はよいにしてもEUと歩調を合わせる財貿易部分はTPP参加にあたって足かせになるのではないか。極端なケースとして「EU規制が障害となってTPP参加がかなわない」という状況に直面した場合、英国はどうするのだろうか。

英国はEU規制を修正するプロセスには当然加われないことを考えると、ここに「ねじれ」が残る。もちろん、EUにとって小事であれば英国のために規則を修正するということも考えられなくはない。だが、EUからすれば、そこまでしてやる義理はないというのが本音であろう。これはTPPに限らず、EU域外の国・地域と貿易協定を締結する際に問題になる論点であり、財貿易でEU規制を受け入れることによって、英国が第三国との交渉で不自由を被る可能性がある。

アイルランド国境問題は実質先送り

懸案のアイルランド国境問題についてははっきりとした着地が見えていない。英国のEU離脱に際し、EU域外から英国経由でEU域内と貿易するケース、EU加盟国であるアイルランドが英国経由で他のEU加盟国と貿易するケースなどにおいて関税の徴収をどのように行うのかが課題となる。この点の手続きは複雑である。

たとえば想定される1つのケースとして、英国の税関では、まずEU域外から到着した財にEUが課す域外関税を代行徴収する。この財が英国経由でEU域内に向かう場合、英国は代行徴収した域外関税をEUに渡すことになる。一方、EU域内に向かわず英国内に残る財は「英国が課す関税」(①)と「EUが課す域外関税」(②)の差額分を企業に返納もしくは追徴することになる(返納か追徴かは①と②の大小関係次第)。

しかし、英国に荷揚げされる財の行き先を正確に仕分けることができるのか。そして差額決済による追徴や返納が迅速かつ正確に行われるのか。考えるだけでも頭の痛い問題であり、今秋までに決着を見るのは難しそうである。

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