「まるで旅客機」インドネシアの新型夜行列車 グランクラスよりも快適、日本を超えたか?
インドネシアにはかつて寝台車が存在しており、その復活はかねてからうわさされていたが、今回は「座席タイプ」での復活となった。2往復中1往復は昼行便であるという事情もはらんでいるのだろうが、ノスタルジアよりも、先進さ、格好良さを求めるインドネシアらしい事象である。開放2段寝台では、今の時代はやらないのだ。
エグゼクティブの上をゆくクラスとしては、今年3月から需要が旺盛なジャカルタ―バンドン間の定期列車に増結する形で「プライオリティ」クラスが導入されている。やはり、こちらも通常エグゼクティブの約2倍の25万ルピア(約2000円)という料金設定だ。それでも、週末ともなれば入手も難しいプラチナチケットとなり、当初増結する列車は1日2往復の設定だったが、すぐに4往復に増強されている。
この車両はKAIの傘下にあるツアー会社が借り上げて運行されているが、通常の列車と同じ手順で予約ができる。今年のレバラン輸送ではジャカルタ―ジョグジャカルタ―ソロ、また、スラバヤ便への連結も実施された。「列車がこんなに快適になっているとは知らなかった」と、これまで鉄道を利用しなかった層からの評判も上々だ。このように、近年のKAIは高所得者層の取り込みに力を入れ、ジャカルタの通勤鉄道同様に、旧来の鉄道に対するマイナスイメージからの脱却に力を入れている。
レバラン期間でも安心して鉄道を利用できる
ほんの数年前まで、列車の大混雑は断食明けを象徴する風景でもあった。窓から車内に乗り込み、そして屋根にまで人がよじ登る。駅もチケットを買い求める乗客であふれる。もちろん、そのような混雑はスリなどの温床でもあった。そのため、KAIは急行列車に相当する低所得者向けのエコノミーとエグゼクティブの停車駅を分離するほどであった。そして、多数の臨時列車が走るこの期間の列車遅延は常態化しており、その遅れは数時間にも及んでいた。だが現在、そのような阿鼻叫喚の地獄絵図はもう見られない。今やレバラン期間であっても安心して鉄道を利用できる。実際、欧米系の旅行者を中心として多くの外国人観光客の姿を目にすることができる。
では、どのようにその混雑を解消したのだろうか。単なる増発だけではない。それは、イノベーションによる既得権益の打破である。まず1つ目は全列車の冷房化だ。もともと全車指定席のエグゼクティブ列車は冷房付きであったが、当時非冷房だったエコノミー列車も冷房化し、同時に種別を全車指定席のエコノミーAC列車に変更、2012年8月からたった1年で冷房化と同時に全車指定化を達成した。自由席のエコノミー列車を全廃することで、輸送力は圧倒的に下がることになるが、エコノミーACはエグゼクティブ並みに停車駅を絞り込み、主要駅以外には列車を止めない方針とした。
さらに、政府プログラムによる低所得者救済用の一部列車を除き、冷房化と合わせ運賃値上げも実施している。なおKAIの運賃は航空運賃のごとく、乗車時期、購入時期により、変動の幅を持たせている。つまり、このように物理的に利用者の絞り込みを行ったのだ。チケットを入手できない客に対しては、どうぞ他の輸送機関をご利用くださいと言わんばかりである。
2つ目は、インターネット予約サービスの導入である。これも同じく2012年8月から開始し、当初予定では1年後の駅窓口全廃を掲げていた。ただしこれは主に地方の利用者からの反発で実現しなかった。ただ、この新しい予約システムでは購入時に身分証明書情報も入力するため、改札時に顔写真入りの住民カードなどの番号(外国人はパスポートで可)と、チケットに印字されているデータを照合し、住民登録されていない者はもちろんのこと、本人との確認が取れない場合、改札を通過できなくなった。これは、車内での犯罪抑止力のほか、かつて駅周辺で横行したダフ屋対策でもあるが、無賃乗車を図る不届き者たちの駅ホームへの侵入をシャットアウトすることに成功した。
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