VWとトヨタの商業自動運転技術は何が違うか ドイツで最新の完全自動運転車に乗ってきた

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今後はこうした乗用車での開発に加え、商用車の分野でも活用可能な自動運転技術の開発が急ピッチで進む。この商用に特化した自律自動運転技術を「MaaS/Mobility as a Service/サービスを行うための移動体」と呼ぶ。たとえば2018年1月にアメリカ・ラスベガスで開催されたCES(世界家電ショー)では、トヨタ自動車からMaaSを見据えた新たな移動体として「e-Palette Concept」と名付けられた電気自動車が登場した。

トヨタ自動車「e-Palette Concept」

乗用車は主に人の移動を担っているが、商用車ではバスなどによる人の移動に加えて、トラックが国土を縦横無尽に走り回ることによって食料品や物品などが行き渡り、物流が成り立っている。このように商用車は、人々の生活を下支えするとともにさまざまなサービスの根幹をも担っている。

2017年3月、スイスで開かれたジュネーブモーターショー2017でフォルクスワーゲングループは(以下、VW)はMaaSを見据えたコンセプトモデルとして「SEDRIC」を発表した。「セルフ(SE)、ドライビング(DRI)、カー(C)」というそれぞれの単語を結びつけて命名されたSEDRICはSAEによる自動化レベル5、つまり人を介さずとも自動走行状態が保たれる自律自動運転技術を搭載する。

車内にはステアリングやブレーキの類いは一切ない。VWはこのSEDRICを乗用車として販売するのでなく、商用利用を目的としたMaaS向け車両として開発しており、2020~2025年に向けて段階的な実用化を目指す。よってSEDRICの販売先は既存の自動車ユーザーではなく、公共交通機関を担う企業(民間/公的を問わず)となる。

移動とサービスが一体化

2018年6月、国際情報通信技術見本市「CEBIT2018」(ドイツ・ハノーファー)において、SEDRICの最新シリーズである「SEDRICアクティブ」が発表された。SEDRICアクティブは、SEDRICをベースにユーザーがスポーツする際の良きパートナーとなることを目的に、活動的なライフシーンに合致させるような作り込みがなされている。

SEDRICアクティブがドアを開けたところ(筆者撮影)

 

会場に展示されていたSEDRICアクティブはひとつの提案として、キャリアを装着したルーフにサーフボードを積載していた。ユーザーは好きな場所でスマートフォンのアプリケーションからSEDRICアクティブを呼び出すと、すぐさま気象状況が考慮された波乗りに最適な時間と海岸の情報がAI(人工知能)を用いたサーバーからスマートフォンの画面へと送信される。まさにコネクティッド、つながる世界だ。

ユーザーがその時点で提案された情報を気に入り受け入れると、あとは車内に乗り込むだけで提案した海岸へと運んでくれる。ここでの要はSEDRICによってシームレスな人が移動が完結するという事象だけに留まらない。AIやコネクティッド技術を用いることで移動の目的(ここではサーフィンを楽しむこと)に新鮮な情報を加えることで移動の質が向上するという副次的効果にある。このようにMaaSとは、移動とサービスが一体化したものであることがおわかりいただけるだろう。

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