ベンチャーブームに沸く日本人が知らない壁 調達額急増も米国や中国と比べればなお小粒

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ただ、米調査会社のCBインサイツによると、日本のユニコーン企業数は6月時点で2社。上場したメルカリを除くと、プリファード・ネットワークスの1社だけ。一方、世界のユニコーン企業数を見渡すと、米国が116社、中国71社とその差は圧倒的。米ウーバーや中国の滴滴出行(ディディチューシン)など評価額が500億ドルを超える未公開ベンチャー企業も存在する。

理由はいくつもある。米国では年金基金などの大型機関投資家が直接リスクマネーを供給しており、VC投資額は7.5兆円と日本の約50倍。日本のベンチャー市場の絶対額はまだまだ小さい。さらに「日本はVCの投資回収の手段が、IPO(株式新規公開)偏重で大きく育てない。ここ10年ほど骨太な技術型のベンチャーが生まれてこなかった」(ベンチャーが専門のニッセイ基礎研究所の中村洋介主任研究員)。

そもそも日本人は起業の意欲が低い

そもそも日本人は、起業の意欲が低いという調査もある。米バブソン大学などがまとめたGEM(グローバル・アントレプレナーシップ・モニター)調査によると、2017年の日本の「起業活動率」(18~64歳人口のうち起業準備中および起業後3年半以内の人の比率)は4.7%と54カ国中50位。新卒一括採用や終身雇用をはじめ、人材の流動化が進まない日本で起業は一般的とはいえない。

ただ、こうした傾向も今後変わる可能性がある。「起業家教育を受けた人に限った企業活動率では、実は最も高い部類に入る。東京大学の中では、大企業ではなく最先端のベンチャー企業に身を置くほうが、リスクが低いと考える学生が出始めてきている」(東大の各務茂夫教授)。

また、500 Startups日本法人代表のジェームズ・ライニー氏は、「メルカリの上場を機に、温度感は変わってきている」と話す。メルカリの上場で一山当てた投資家やストックオプションを得た社員のマネーが還流し、新たなユニコーン企業が生まれる。そんなエコシステムが日本に広がるのでは、と期待する声も出てきている。

週刊東洋経済7月14日号(7月9日発売)の特集は「ビジネスのヒントはここにある!すごいベンチャー100」です。
秦 卓弥 東洋経済 記者

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はた たくや / Takuya Hata

流通、石油、総合商社などの産業担当記者を経て、2016年から『週刊東洋経済』編集部。「ザ・商社 次の一手」、「中国VS.日本 50番勝負」などの大型特集を手掛ける。19年から『会社四季報 プロ500』副編集長。21年から再び『週刊東洋経済』編集部。24年から8年振りの記者職に復帰、現在は自動車・重工業界を担当。アジア、マーケット、エネルギーに関心。

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