ナシなのに「彼氏面する男」が跋扈する真因 役に立たない「クソバイス」にはうんざりだ

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宮崎:僕が彼氏面男子を発見したときも同じです。飲みの場、職場、学校などあらゆる場所で、彼氏でもないのに、なぜか女性に対して彼氏面する男性がいる。たとえば、彼女でもない女性に「その髪型、俺の好みじゃないから」と言ったり、女性が薄着していたら「肌を見せて、みっともない!」と怒鳴り、その後、「さっきはごめんな。お前が軽い女に見られるのが嫌だったんだ」と言ったり。さらには、飲み会の後に、「女の子の一人歩きは危ないから、帰ったら必ず俺に電話しろよ」とのたまう男性までいる(笑)。

そうしたモヤモヤをツイッターに投稿したところ、たくさんの女性たちからDMやメールで、「私も彼氏面男子の被害に遭ったことがある」というタレコミが集まってきました。ちなみに、犬山さんの本でいちばん面白かった彼氏面のクソバイスは、20代の女性が男友達から言われた、「もっと気まぐれな猫にならなきゃ」というものです。思わず、「猫に謝れ!」と絶叫してしまいました(笑)。

私たちの世代で「負の連鎖」を断ち切る

犬山:クソバイスや彼氏面をしてしまう人が多いのは、今の時代、みんな口では「多様性が大事」と言っているけど、本音では多様性を大切だと思っていなかったり、理解している人が少なかったりするからだと思うんですよね。想像力が欠如した言動をしてしまうんだと思う。

犬山紙子(いぬやま かみこ)/1981年生まれ。イラストエッセイスト。トホホな生態を持つ美女たちを描いた『負け美女 ルックスが仇になる』でデビュー。「SPA!」や『anan』などにも連載を持ち、テレビやラジオなどにコメンテーターとしても出演中。著書に『アドバイスかと思ったら呪いだった。』(ポプラ文庫)、『私、子ども欲しいかもしれない。』(平凡社)など多数(撮影:菊岡 俊子)

宮崎:そのとおりですね。

犬山:でも、こうした問題って年長の世代だけではなく、私たちの世代も陥ってしまうことだと思うんですよ。私たちの世代ってネットにも詳しいし、働き方や恋愛、結婚観についても柔軟な考え方を持っている人が多い。だから、自分たちは「社会のガン」にはならないという感覚を持ちやすい。でも、そんなことはまったくなくて、私たち自身もガンになってしまう可能性をまだまだ秘めているんです。

気をつけなければ、無意識に差別的なことを口にしてしまうこともあるし、自虐的な物言いにもそういう偏見が含まれていると思う。たとえば、私たちの世代って「もういい歳なのに、まだ独身でヤバい」みたいなことを、すごく言ってきたんですね。私も言っていました。下の世代の子たちが、そういう発言を聞いて、どう思うか。その言葉が、「呪い」になって縛ってしまうことにもなる。それ以前に、「あの人って、独身であることがヤバいと思う価値観の人なんだ」とガッカリさせてしまうかもしれない。

『モヤモヤするあの人 常識と非常識のあいだ』(幻冬舎文庫)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

宮崎:僕も気をつけなければいけないと思っています。下の世代からどう見えるかも、ちゃんと考えていかないと。気がついたら、僕もいいおっさんの年齢になってきましたから。“おっさん化”するのは嫌ですけど、おっさんの自覚がないほうが今の時代はヤバそう。

「呪い」という言葉は、ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」にも出てきましたね。そういう「言霊」を内在化して自分を縛ってしまう人も多そうです。

犬山:私たちは、団塊の世代だ、バブル世代だと言って古い価値観について言及してきたけど、そろそろ私たちの世代も社会的な力を持つようになってきていますから、社会のガンにならないよう、十分に注意しなければいけません。私はこの世代で、これまで続いてきた負の連鎖を断ち切らなければならないと思っています。クソバイスも彼氏面男子も、そうした負の連鎖が引き起こしていることでもありますから。

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