“大きさ”以外にも欠点、逆風の新国立競技場

神宮外苑は風致地区。槇文彦氏が再考を訴える

計画のリセットが必要

事業主体のJSCも、現行計画の問題点は認識している。「今回の国際コンペはデザインを競ってもらうもの。詳細な設計までをお願いするような通常のコンペとは違う」(新国立競技場設置本部)。実際の設計はこれから細かく検討される予定で、実現が難しい部分については変更していくという。

当初は9月末までに基本設計前の条件整備を終える段取りだったが、先延ばしになっている。下村博文・文部科学相は「デザインは生かすし競技場の規模もIOC基準に合わせるが、周辺施設を縮小して予算を抑制する」と明言。1300億円を想定している予算の膨張を防ぐことを目指す。

ただ、建設予定地を神宮外苑から変更する考えはないという。半世紀前に建設された現国立競技場は老朽化が進み、大規模な国際大会を行うことが実質的に難しい。それを世界基準の施設として建て替えるという考えがあるためだ。

収容人数についても、「常設で8万人規模」が維持される。「仮設席については現在議論されておらず、今後もその予定はない」という。

新国立競技場は五輪の1年前、19年のラグビーW杯メイン会場になることが決まっており、同年3月までに竣工しなければならない。そのためには、残された時間的余裕は少なく、抜本的な見直しを行うという発想自体がないようだ。

とはいえ、建築界では神宮での建設見直しを求める意見が強くなっている。10月11日には東京都内で槇氏の論考と同じ「新国立競技場案を神宮外苑の歴史文脈の中で考える」をテーマにシンポジウムが開催され、槇氏のほか、その主旨に賛同する建築家などが参加した。会場の日本青年館ホールには350人の定員を超えるほどの人が集まった。

建築家で東京大学大学院教授の大野秀敏氏は「今回の施設はまるでスーパーカーのようだ。車庫に入れようと思ったら、うまく入らない。都市計画が機能していない。1300億円の建物を50年以上、維持しようと思ったらそれと同じくらいの費用もかかる」と懸念を表明した。

「重要文化財である絵画館のそばに巨大施設が建設されるのは、普通は考えにくい」(都市計画の専門家である、陣内秀信・法政大学デザイン工学部教授)。社会学者の宮台真司・首都大学東京教授は「この施設はわれわれの子孫にはリスペクトされないものである」と言い切る。

槇氏を中心とした有識者約100名は11月中旬ごろをメドにJSCや東京都などに対し、新国立競技場の建設計画の見直しを求める要望書を提出する考えだ。

「立地も含めて、計画をリセットすべきだ。誰かがそれを決断しなければならない」

そもそも、新国立競技場をめぐっては建設費を国と都がどう分担するのか、という点でもめている。1300億円を超える可能性が高いとみられている巨費を前にして、国も都も尻込みしているわけだ。その意味では、神宮にこだわることなく、原点から見直しを行う必要があるのではないか。そもそも、16年の計画では晴海にメインスタジアムを設置する予定だったことも踏まえて、候補地を柔軟に考えていくことが必要だろう。

週刊東洋経済2013年11月2日特大号

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