日本人が積極的に「サバ缶」を食べだしたワケ みそ汁からパスタ、炊き込みご飯まで

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実はマルハニチロでは、サバ缶よりイワシ缶の売り上げの伸び率が高い。サバ缶が急伸した時期と同じ2017年10月から半年間の売り上げが、前年同時期と比べて7割もアップしている。

クックパッドでは、イワシ缶レシピの検索数が2015年から上昇し始め、2017年から急激に伸びた。同社の6月の検索頻度は前年同時期と比べて、サバみそ煮缶が約1.67倍、サバ缶が約1.59倍、サバ水煮缶が約1.55倍で、イワシ缶は約1.45倍になっている。サバ缶ほどではないが、イワシ缶レシピの検索数も大きく伸びたと言える。

魚缶に特化したレシピ本も登場

サバ缶料理で、魚缶の使い勝手のよさに気づいた人たちが、同じくヘルシーと言われるイワシ缶料理にも挑戦しているのではないだろうか。

魚缶料理が注目されるなか、4月20日付で魚缶に特化したレシピ本『かんたん!ヘルシー!魚の缶詰レシピ』(キッチンさかな、河出書房新社)も刊行された。サバ缶、オイルサーディン、ツナ缶、サケ缶などのレシピが紹介されている。

日本人の魚離れは必ずしも魚嫌いが増えたからではない。回転ずしなども含め、外食で魚料理が人気なのは、本当は魚を食べたい人が多いからだ。しかし、ライフスタイルが変化し、日常的に食べるのは難しくなった。

やがて幅広いレシピを気軽に調べる習慣が広まった時代になり、魚缶という使い勝手のいい商品が発見された。サバ缶、イワシ缶といった、今まであまり料理の素材として使われていなかった魚缶の料理が人気になっているのは、個人の知恵を気軽にやり取りできるインターネット時代ならではの現象と言える。魚缶が再発見されたことで、今、再び魚料理が家庭で頻繁に食卓に上る日がやってきているのかもしれない。

阿古 真理 作家・生活史研究家

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あこ まり / Mari Aco

1968年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部卒業。女性の生き方や家族、食、暮らしをテーマに、ルポを執筆。著書に『『平成・令和 食ブーム総ざらい』(集英社インターナショナル)』『日本外食全史』(亜紀書房)『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた』(幻冬舎)など。

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