10代にピンと来ないフィルム時代の撮影事情 デジカメ移行の過渡期をカメラマンが語る
「編集者から仕事をいただく際、デジタルで撮るのかフィルムで撮るのかを確認しなければならない時期がありました。あるいは、『大きなカットはフィルムで、小さなカットはデジタルで』と、カメラの使い分けを指示されることも珍しくなかったですね。フィルムはどうしても管材費(フィルム代や現像代)がかかるので、小さな解像度で足りるものについては、デジカメを使って節約していたわけです」
当時は、表紙や扉ページ用の大カットのみフィルムを用い、その他のカットはデジカメで撮る現場も多かったそう。これも過渡期ならではのエピソードですね。
デジカメ全盛の今も残る、フィルムの良さとは?
デジカメに移行したことで負担が大幅に軽減された一方で、フィルム時代ゆえの良さもあると岡村さんは語ります。
「デジカメになってからはポラロイドカメラを使うことはありませんし、機材は格段に少なくなりました。撮影にかかる時間も、およそ半減しているのではないでしょうか。その反面、フィルム時代は毎回、直接納品に行く必要があったため、定期的に編集者と顔を合わせる機会があり、それがコミュニケーションの機会になっていました。最近は発注から納品まで、メールのやりとりだけで完結するクライアントも多く、ちょっと寂しいですね」
なお、今でも1件だけ、フィルムで撮影する定期案件を抱えているという岡村さん。デジタル全盛のこの時代に、フィルムを使う理由は何でしょうか?
「ある飲食店のメニュー撮影の仕事なのですが、これはフィルムの発色が今でも好みというオーナーのこだわりによるリクエストです。当然、コストはかさみますが、フィルムならではの奥深さとダイレクトな色表現が忘れられないという人は、今でも少なくないですね」