フォード「マスタング」しぶとく残る車の真価 乗用車不振の中、イメージリーダーを守る

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大手の映画では、車両提供以外に10億円単位の費用を捻出しないと使ってもらえないようになっている。それでもわずか数十秒のTV広告に数億円を費やすより、何十分も映画の中でそのクルマが暴れまわるところを視聴者に刷り込みができる映画のプロダクトプレースメントは効果的で、2004年の『アイ、ロボット』のアウディなどは典型である。このプロダクトプレースメント手法も使って、マスタングやカマロは若者層にも広くアピールしている。

ショーの目玉は初代マスタングへのオマージュ

昨今、家電ショーであるCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)への自動車メーカーの出展が著しく、CESと同じ1月開催のデトロイトモーターショーがかなり圧迫されている。2018年のデトロイトショーに、地元フォードは目新しい新車は出さなかった。それでも記者会見だけは行ったのだが、その目玉がなんとマスタング・ブリットという深いグリーンメタリックに塗装されたマスタングの特装車であった。

初代マスタングと6代目が並べられていた(筆者撮影)

これは1968年にスティーブ・マックイーン主演のアクション映画『ブリット』に登場した初代マスタングへのオマージュである。会場には当時マックイーンが乗った初代マスタングを復元したクルマと、6代目マスタングベースのブリット特装車が並べて展示してあった。そう、マスタングこそは映画というメディアを通じて若者に訴求するプロダクトプレースメントの元祖でもあるのだ。

6代目(右)リアスタイルも初代のイメージを残している(筆者撮影)

マスタングとは、小型の野生馬を語源とすることは冒頭に述べたが、馬という品種は北米大陸発祥でありながら氷河期に北米の馬は一度絶滅したという説がある。マスタングは、乗用車の大量絶滅を乗り切って、唯一生き残る品種となった。かつてマスタングが戦った相手の日本産のクーペが、フェアレディZ以外はほとんど死滅したこともあり、これからもずっとマスタングには生き残ってほしいものだ。

森山 一雄 自動車ライター

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もりやま かずお / Kazuo Moriyama

海外事情通の自動車業界ライター。

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