飲み過ぎ注意!薬の大量摂取は毒にもなる 72歳女性を回復させた超シンプルな治療法

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初診2年後の受診時には、Aさんははっきりとした口調でこう話してくれた。

「下肢のしびれ・痛みは時々あるが、前ほどひどくはない。杖で外出し、週1回の手芸教室に通っている。先日は、久しぶりに小学校の同窓会に出席した」

劇的な改善である。

筆者に会うと元気になる(?)とのことで、今でも半年に1度ほど夫とともに来院している。

薬も過ぎれば毒となる

鎮痛薬にもいろいろな種類があり、それぞれ使い方にクセがある。

たとえば、モルヒネなどの医療用麻薬は、手術中や手術直後の痛みなどの急性の痛みや、がんによる痛みなどには極めて有効であり、積極的に使用しても問題は少ない。

一方、Aさんのような慢性の痛みでは、ほとんどの場合に効果はあまりなく、それどころか大量に長期間使用を続けると、さまざまな副作用・合併症を起こしてかえってQOL(生活の質)を損なうことが知られている。

さらに、複数の薬剤を同時に使用すると、相互作用を起こして、副作用が増強されたり、滅多に起こらない副作用が起こったりする。しかも、残念ながら日本では慢性の痛みに対する鎮痛薬の使い方に習熟している医師は極めて少ない。

Aさんの場合には、複数の医師が連絡をほとんど取らないで複数の薬を処方していた、という悪条件も重なって、効果はほとんどない。その一方で、認知障害、便秘、胃もたれなどのさまざまな副作用に苦しめられていたのである。

高血圧や糖尿病の薬のように、長期間、定期的に服用を続けることが重要な薬もある。だが、鎮痛薬の多くは、必要最小限の量を必要最短期間だけ服用すべきなのである。

また、痛みについてだけでなく、同じ病気に対して複数の医師から処方を受けるのは、原則として避けたほうがいい。そして、薬の効果や副作用について疑問がある場合には、処方した医師や薬局の薬剤師に率直に尋ねてほしい。場合によっては、セカンドオピニオンを求めることも考慮すべきだろう。

まさに「薬も過ぎれば毒となる」のだ。

北原 雅樹 ペインクリニック専門医、麻酔科医

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きたはら まさき / Masaki Kitahara

横浜市立大学附属市民総合医療センター ペインクリニック診療教授。1987年東京大学医学部卒業。1991〜96年、世界で初めて設立された痛み治療センター、ワシントン州立ワシントン大学ペインセンターに留学。帝京大学溝口病院麻酔科講師、東京慈恵会医科大学ペインクリニック診療部長、麻酔科准教授を経て、2017年4月から横浜市立大学附属市民総合医療センター。2018年4月現職。専門は難治性慢性疼痛の治療。

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