ネットが嘘も事実にしてしまう世界の生き方 技術は生活を簡単にではなく、難しくした

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何が真実で何が真実でないのか(写真:metamorworks / PIXTA)
インターネットは知識を民主化し、私たちが誰を、なぜ信用するのかについて、その性質までも変えてしまった。大きな組織に対する信頼が揺らぐとき、私たちは信頼できる誰かや何かを探そうとする。信じるものによって、私たちの意識や行動も変わる――。
『〔データブック〕近未来予測2025』の著者であり、未来予測プログラム「フューチャー・アジェンダ」を主宰するティム・ジョーンズとキャロライン・デューイングは、世界各地でワークショップを開催し、こうした地球規模の課題について識者と議論を重ねてきた。2人が語る、真実が揺らぐ社会の行く末とは?

ネット民が真実を決める時代

私たちが信じるものが、私たちの意識や行動を変える。大量の情報の渦に巻き込まれて、“真実”とはネット民が同意するものになるのかもしれない。その世界では“ネット民による事実認定”が、検索結果よりも優先される。

私たちがいつの時代にも、真実と真実でないものとを見分けにくい“煙と鏡の世界”に生きてきたという考えに、ほとんどの人は同意するのではないだろうか。歴史家、ジャーナリスト、政治家は何世代にもわたって、事実を掘り起こし、大衆に説明することでキャリアを築いてきた。

だが今後は、指先だけで(ほぼ)完璧な情報が手に入るにもかかわらず、人生がますますあいまいなものになっていくように思える。これまで以上に難しくなるのは、「何が真実で何が真実でないのか」を判断し、意味を読み解くためには誰を、何を頼りにすればいいのかを決めることだ。膨大な量のデータによってものごとは明確になるどころか、それが事実なのか、正確なのか、誤報なのか、誰かの再解釈なのかを見分けることはほぼ不可能になった。

中にはまったくのデマも混じっている。いまの時代は誰でも、どんな話題の意見や反対意見でも簡単に読むことができる。情報を読み解くことは難しいが、それ以上に難しいのが、その際に誰を、何を手掛かりにするかだろう。

汚職や不祥事が相次ぐ政府や企業に対して、世間は懐疑的な目を向けるようになった。調査会社のエデルマンが2015年に世界各地で行った世論調査によれば──インド、インドネシア、そして興味深いことにロシアでも政府に対する信頼度が大きく上がったために、全体的な信頼度はわずかながら上昇したとはいえ──、調査対象の27カ国のうち、実に19カ国の人びとが自国の政府を信用していなかった。

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