ネットが嘘も事実にしてしまう世界の生き方 技術は生活を簡単にではなく、難しくした

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メディアに対する信頼度も同様に低く、調査を行った国の60パーセントがメディアを信用していなかった。企業のCEOに対する信頼は過去最低を記録し、ほとんどの国で50パーセントを下回った。最も信頼度が高かったNGOでさえ、前回の66パーセントから63パーセントに下がっている。となると、私たちはどこで“正しい”答えを見つけられるのだろうか。

アップル製品の秘密は「うそがない」こと

私たちは、自分と考えが似ていると思う個人のカスタマーレビューや、SNSのコメントを参考にして、ある製品や特定の考えの長所や短所を判断する。この時、消費者が見ているのは、製造業者が訴求しようとしている製品イメージではない。私たちが慎重に見極めようとするのは、いろいろな製品やサービスの質や価値、あるいは特定の考えの真偽をめぐってSNSでどんな意見が出ているかである。

これまでであれば、自分に助言してくれる相手の素性を比較的簡単に知ることもできたが、いまのように忙しく、即断を迫られるような社会では、自分が誰の意見を、それも特にオンラインで見つけた誰のアドバイスを参考にしているのか、じっくり考える者はいない。

その一方で、私たちはますます自分自身の意見を参考にしているのだと言う者もいる。つまり私たちが重視しているのは、友人や家族や、自分と同じような考えの持ち主の意見だというわけだ。

近代経済は、自由移動と信頼に大きく依存している。広告に多大な予算を費やすことで生き残ってきたものの、可もなし不可もなしといった中途半端な製品は、今後は売り上げを落とすかもしれない。消費者がその製品の欠陥に気づき、高い金額を支払いたくなくなるからだ。

それに引き替え、良質な製品を送り出し、うそのないストーリーを語る企業はさらに大きな利益を上げるに違いない。その絶好のお手本がアップルだろう。優れたデザインと使いやすさによって、コモディティ化(競合する製品同士について、性能や品質、ブランド力に大差がなくなり、似たような製品が多く流通するようになること)の進んだ市場でも、アップルの製品は強力なブランド力を放っている。

市民が政府や企業に対する信頼を失った理由は、誰もがオンラインで簡単に自分の意見を表明できるようになったからであり、それは「インターネットではほかの書き込みが情報の正しさを証明してくれるはずだ」という前提に基づいている。大きな問題において、その前提はたいてい正しいが、ウィキペディアでさえつねに情報が正確なわけではない。

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