ネットが嘘も事実にしてしまう世界の生き方 技術は生活を簡単にではなく、難しくした
今後、信頼感を維持することはいっそう難しくなるだろう。企業も政治家も、公約を果たすことがこれまで以上に重要になった。技術は私たちの生活を簡単にしたのではなく、ますます複雑にしたのだ。つまり、複数のプラットフォームにわたってこれまで以上に目を光らせなければ、何が真実かをより明確に理解できなくなった。あらゆるものの自動化が進むいまの時代に、そうやって目を光らせる時間や意思のある者がどれほどいるだろうか。しかも、人間に代わってAIがものごとを決定するようになると、さらに大きな変化が起きると考える者もいる。
つながると同時に断片化する世界で
20世紀には、善悪に対する私たちの考えに疑問を突き付け、その判断を変えるようなできごとがたくさん起きた。2度の世界大戦、大恐慌、ブレトンウッズ協定、ロシア革命、冷戦、中国の第2次国共内戦、中国の改革開放、アパルトヘイト、ルワンダ虐殺、宗教離れ、CNNニュースチャンネル、インターネットの出現など、ほんの十数例を挙げればこのようになる。
2000~2015年までの15年間を見ても、21世紀の出来事をたくさん挙げることができるだろう。アメリカ同時多発テロ事件、アルカイダ、過激派組織IS、気候変動、2008年の世界金融危機、欧州で増加するイスラム教信者、SNS、エドワード・スノーデン事件……これらはほんの一例だ。私たちが誰を、何を、なぜ信じるのかも、目まぐるしい速さで変化している。
私たちが世界各地で開いたワークショップで集めた情報から察するに、世界はますますつながっていると同時に断片化しているようだ。GDP成長率が動かすグローバリゼーションはやがてピークを迎え、成長をもっと包括的な視点でとらえる傾向に変わっていくのかもしれない。
もっとも、それも一部の地域の話であって、あらゆる地域がそうなるわけではない。私たちがどの情報にアクセスし、どの情報にはアクセスしないのか、私たちが目にし、読み、耳にした情報について最終的にどんな判断を下すのか──ビッグデータ、デジタル化、さまざまなシステムの変化は、それらを本質的に変えていく。
さまざまな信念や宗教が世間の注目を奪い合い、信仰心を持たない人を対象にした新たなネットワークも登場するなか、ひとつだけ確かなことがある──状況は変化している。
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