親の一方的な価値観の押し付けは時代遅れだ 「厳しすぎる父親」にわかってもらうには?

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父上の厳しさの内容と程度の詳細がわかりませんので明言はできませんが、父上はあなたに、そのことを言っておられるのではないでしょうか。しかしその教育法があなたを苦しめ、そしてあなたが義務教育を終えていて、自活できるなら、独立を早めるのも仕方がないと思います。

いずれにせよ、父上のあなたへの愛情を忘れず、また自立につながる自分のやりたいことに向かって一生懸命努力し、かつわかってもらうための努力を十分したうえで、自己責任で自立することを誰も止めることはできません。しかしながら、まだ義務教育中で、自立せず親の支援で生活しているのに、仕事につながらない”好きなこと“だけをして生活できないのは、言うまでもないでしょう。

自主性・自己管理能力を養成しよう

箱根駅伝4連覇を成し遂げた青山学院大学の原晋監督の指導法は、従来の体育会系らしくないことでも有名になりました。選手が自分で目標を設定し、それを達成するためにはどのような練習をするかも選手が自主的に決めて管理し、練習するのだそうです。

テレビで見る選手たちはどの顔も、やらされている感がなく生き生きしていて、それで日本一なのですからそれがすばらしくて私は毎年見ていますが、その裏には組織のルールが厳然と存在していると選手たちは口をそろえます。

原監督の現役選手時代の厳しすぎた高校時代と、緩すぎた大学時代の練習法を教訓にされた指導だと聞きました。箱根駅伝で優勝することだけが目標ではなく、その後長く過ごすことになる社会人として通用するためのさまざまな教育が、その厳しい練習の中に含まれているそうです。

大学ラグビー9連覇を成し遂げた帝京大学・岩出雅之監督も、上下関係を重視した旧態依然とした指導法は、現代の子には通用しないと語っておられます。これは監督になりたての時代に続いた低迷期からの体験からだそうで、「選手に教えるのではなく選手が自分で考える」「選手の日々の自己管理やセルフコントロールの重視」「何をするにしてもしっかりと準備する」などが、強いチームへの改革に欠かせなかったと語っておられます。

指導者または親の厳しすぎる教育や一方的な価値観の押し付けが、時代遅れか効果的でないことは、上記の輝かしい連続日本一が示しています。これらはぜひ勇気様の父上に、さまざまな方法で理解していただきたい教訓です。

岩出監督はその著書(『負けない作法』)で、「私の願いは、卒業後、彼らが社会人として周囲の人から愛され、信頼され、幸せに生きていく力を身につけてほしい、ということです」と記しておられます。何かを成し遂げるには自己管理ができ、好き嫌いとは別にせねばならない作法(しっかりとした準備)がいる、と書いておられます。

これらは組織的なスポーツに限らず個人レベルの勉学や芸術への道、その他社会人としても家庭人としても、人生のあらゆる場面で要求されることです。父上もこれらの「準備」や守るべき「ルールや習慣」について、あなたに厳しく教育しておられるのは間違いなく、ただその方法に問題があるようです。

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