京急×東大タッグ「三浦半島振興」研究の中身 「ユーザー像」を作り込み地域の魅力発掘
京浜急行電鉄(京急電鉄)グループが、自社沿線の三浦半島で新しい形の地域振興を始めようとしている。東京大学(東大)との共同研究のワークショップを通じた地域の魅力の明確化だ。
昨年度は3回のワークショップが行われ、「“あるがまま”を楽しむ」という三浦半島エリアのコンセプトを打ち出した。
7月21、22日にはこのコンセプトを体現するイベント「三浦Cocoon」が行われる。京急油壺マリンパークを起点に三浦半島南部に点在する魅力のある場所をレンタサイクルでゆっくりと回って体験してもらうというものだ。イベントでは三浦市内の協力施設で食事や体験を提供するほか、城ヶ島公園に設ける特設会場では地元協力者による一箱古本市や焚き火、星空鑑賞などを行う。このイベントも京急電鉄と東大とのワークショップで議論が行われ、方向性が決定された。
さて、京急電鉄と東大の共同研究に至った背景やワークショップの内容は一体どんなものだったのだろうか。筆者は実際にワークショップを見学してきた。
地域住民はあえて入れず
地域振興のワークショップでは多くの場合、地域住民を巻き込んで議論が行われる。しかし、今回は地域住民の姿はない。これは過去の4回を通じてずっと同じだ。
ワークショップを設計する東大大学院情報学環・安斎勇樹特任助教はこう語る。「京急電鉄グループが三浦半島で軸をもった価値創造をこれからやっていくにあたって、企業としてのビジョンや戦略のないまま市民の多様な要望に耳を傾けて議論してしまうと、企業発のイノベーションとしては弱いモノとなってしまう。そこで、今回は企業の商品開発で使われているような『ペルソナ』を用いた分析によるマーケティングなどを用いてアイディアをだしていく手法をとった」
ペルソナとは、企業が提供する製品やサービスの象徴的なユーザーモデルのことだ。
通常、まちづくりの議論では地域の魅力・課題の発見とそれを利用した地域活性化の方法を議論する。しかし、往々にして住民・企業・行政と地域のさまざまな人の声が入り、「地元が来てほしい人」や「無難な人」へターゲット像が収斂しがちで、かつ「いま来ている人」をベースにした魅力や課題の発見という見方になる。すると、無難にまとまっているが目立ちもしなければ、面白くもないと言われてしまう、ありきたりな地域活性化施策の再生産が起こってしまう。
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