京急×東大タッグ「三浦半島振興」研究の中身 「ユーザー像」を作り込み地域の魅力発掘
しかし、相互PRにより、思わぬことがわかった。秩父で行ったアンケートでは、三浦半島に対して具体的なイメージが湧かないという人が多い事実が明らかになったのだ。
確かに、三浦半島には軍港のまち・横須賀やリゾート地・葉山、まぐろのまち・三崎といった観光資源は点在している。しかし、「三浦半島」全体となったときに「何ができる場所か」はなかなかイメージしづらい。
どうすれば三浦半島の魅力を外に伝えることができ、人が来てくれるのか。ここで勉強会のメンバーは方向性を見失いかけた。
そこで声をかけた先が東京大学だった。実は京急電鉄グループが三浦市に持つ観光施設「京急油壺マリンパーク」の近くに東大の「大学院理学系研究科附属臨海実験所」があり、以前から共同研究を行う縁があったのだ。それが東大との連携の足がかりとなった。そして、京急からの相談を受けた東大が、大学と産業界を結ぶ子会社「東京大学TLO」経由で紹介したのが、安斎勇樹特任助教だったのだ。
ワークショップが生んだつながり
ワークショップで京急電鉄グループの社員は何を得たのだろうか。感想を聞くと、「利害関係のないところから感想や提案が聞けた」、「ペルソナを設定して分析することは、とても新鮮な経験」という声が聞かれた。そして印象的だったのが「京急電鉄グループ内で横のつながりが強化されたこと」という感想が共通していたことだ。
「いままで三浦半島事業でグループのつながりはあまりなかったが、今回のエリア勉強会やワークショップを通じて知り合いができた。いままでグループの施設には入りづらい部分もあったが、いまは気軽に訪ねることができるようになった」(観音崎京急ホテル社員)
「本社に上がってくる情報はまとまったもの。なので、今回のワークショップを通じて現場の意見や情報をもらえてとてもよかった。また、グループ各社の窓口やパイプができたことで現場の情報を聞きやすくなったし、気軽に相談もしやすくなった」(京急電鉄社員)
今回のワークショップは単純に三浦半島のコンセプトづくりができただけではなく、グループの団結力アップや意思疎通強化にも役に立っているようだ。また、京急電鉄側にとっては異分野のメンバーなどとのつながりが生まれたことも大きい。
「ベンチャー企業など、このワークショップからつながりができたことがいちばん大きい。それを今後どう生かしていくかは、今後控えているイベントよりもさらに後で重要になってくるのではないかと思う」(京急電鉄社員)
ワークショップの議論でまとまったコンセプトやイベントの形だけではなく、中にも外にもできた「つながり」はこれからさまざまな施策をするにあたって大きな財産になるに違いない。
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