京急×東大タッグ「三浦半島振興」研究の中身 「ユーザー像」を作り込み地域の魅力発掘

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昨年度のワークショップでの取り組みをまとめたコンセプトブック(筆者撮影)

こうしたペルソナの創造と人物像の掘り下げの結果として生まれたコンセプトが、冒頭で触れた「“あるがまま”を楽しむ」だ。そして、三浦半島の魅力は「観光地化されていない都会から近い“秘境”である」「自分なりの遊び方をつくることができる」ところにあるとして、三浦半島の魅力を明確な形で再定義したコンセプトブックも作られた。

筆者は5月中旬、今年度2回目のワークショップを見学した。今年度は昨年度作成したコンセプト「“あるがまま”を楽しむ」に沿ったイベントのあり方に焦点を当てた議論が行われた。

この日は具体的にはどのようなイベントにすれば2人のペルソナが来るかというテーマで議論が進められた。特にターゲットとなっているのは、先ほど人物像を紹介した「橘久美子」だ。

前半では、前回のワークショップで出てきたアイディアについて本質に立ち返りながら議論を行い、共通のイメージを作る。そして後半では前半の議論に基づき、コンセプトからぶれないイベントの具体的なイメージを作るための議論をすることになった。

「三浦半島にとって京急とは何か」

京急電鉄は営利企業である以上、どうしても企業がイベントを主催する意義というものに引っ張られてしまいがちだ。しかし、あまり引っ張られすぎると、「京急電鉄」が前面に出てしまい、今回のコンセプトから外れてしまう。前半の議論では京急電鉄側から「意義を大切にしつつも実利が出ないと上司を納得させられない」という本音が出つつ、会社としてやる意味とユーザーファーストの間を行き来しながら議論が進んでいった。

その中では「そもそも三浦半島にとって京急電鉄グループとはなにか」という話まで飛び出した。これに対し、京急電鉄グループ側・東大側からさまざまな意見が飛び出し、最終的に「京急とは、自治体の枠を超えて三浦半島エリアを支える存在」という共通認識の形成が行われた。

後半のディスカッションでは、参加者たちがまるで「橘久美子」が実際に存在する人物であり、その人が三浦半島の魅力を楽しむために具体的に何ができるかを、あたかも友人のために旅行プランを作るかのごとく細部まで考えているように筆者には見えた。

最後には各グループの発表が行われ、「橘久美子」はどうしたら来てくれるのかという議論となったが、ここでは「彼女の内向的な性格ではあまり広い層に受けるイベントは好まないのではないか」といった、営利企業が行うイベントでの議論とは思えないユニークな声が出てきたのがとても印象的だった。

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