京急×東大タッグ「三浦半島振興」研究の中身 「ユーザー像」を作り込み地域の魅力発掘

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今回のワークショップの狙いを説明する東大・安斎特任助教(筆者撮影)

これに対し、安斎特任助教のワークショップのやり方はまず「ゼロからコアとなるターゲット像を考える」というところが大きな特徴だ。これによって本当の意味での「ニーズ」にアプローチし、新たな顧客を掘り起こすことができる。

そのために、まずはターゲットとなるユーザー像を作り込むことを通じて三浦半島エリアのコンセプトを明確化する。そして、実際に施策を行う際にコンセプトやターゲットを示しながら京急電鉄内部をはじめ、地域の人や行政を巻き込んでいくこととなる。こうすることでありきたりではない方法での地域活性化を狙う。

安斎特任助教の専門は教育工学・学習科学(ラーニングサイエンス)。専門領域の理論を応用しながら、ワークショップで方法論の開発や実証的な調査・研究を行っている。今回の共同研究では、「ペルソナ」を用いた分析に加え、異分野のさまざまな専門性を持ったメンバーを交えてワークショップを行い、三浦半島のコンセプトを作り上げることとなった。

作り込まれた「ペルソナ」

こうした設計の下、ワークショップは昨年度3回行われた。まずはゼロから「三浦半島エリアの潜在的なユーザー」を明確化した結果、2人のペルソナ「橘久美子」と「加藤健太」が生まれた。そして彼らの視点を通じて三浦半島の魅力的なポイントや課題を探り、コンセプトも明確化させていった。

人物像は細かく作り込まれ、具体的な居住地や出身地・学歴に至るまで設定されている。2人のペルソナのうち、橘久美子はこんな人物像だ。「都内在住の33歳の独身女性で仕事は本の編集者。内向的な性格で、仕事の同僚にも気を遣ってしまう。そのため、1人でいるのは楽だが、一方で少しさみしいと感じている」。

三浦半島を訪れるきっかけとなるストーリーも細かい。橘久美子の場合、「三浦半島の写真を撮影したZINE(個人の作るおしゃれな小冊子)の中にある三浦半島の雰囲気が、どこか懐かしく、都会の喧噪とは縁のない世界であることに惹かれ、三浦半島を訪れる」というものだ。

次ページ「2人」を三浦半島に呼び込むためには?
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