それでもこの長きにわたって番組が継続されたのは、単にタモリさんに対する番組側からの遠慮やとりまき芸人と合わせた政治的交渉力だけではなく、番組に資金を提供しているスポンサー企業の意向やニーズを鑑みたとき、“そのつまらない日常的な番組構成”に一定の経済合理性があったものと考えられる。
「笑っていいとも!」のスポンサー企業からの影響?
「笑っていいとも!」が全然、面白くなかったのに、それでも視聴率が同時間帯ではトップクラスだったというのは、厳然たる事実だ。こちらに同番組のスポンサー企業一覧があるが、この昭和産業という製粉やぶどう糖の決して著名とも言えない企業が長年番組スポンサーをしてきたことは、やはり同時間帯の視聴者は主婦が多くて夕食の材料を売る同企業の対象顧客層と整合性が高かったのだろうか。
ほかの歴代スポンサーにもミスタードーナツ、ダイドードリンコ、ミツカンなどフードメーカーが多い。ほかにはアート引越センターがスポンサー企業なのも、引っ越しの手はずを整えるのはお母さんたちが多いからであろうか。それとも単に番組関係者と創業社長の仲が良くて、広告会社を度外視してタニマチ的に番組を育てよう、とかいう昭和のノリなのだろうか。
ともあれ、この手の企業のブランドイメージとして、先鋭的な研ぎ澄まされた笑いは必要とされておらず、むしろ退屈でも“いつもの日常の光景がそこにある”という安心感が、「笑っていいとも!」の構成に影響を与えていたのかもしれない。
新番組の視聴率はさらに低迷する可能性
「笑っていいとも!」がついに終焉を迎え、今後、かけこみ需要的に視聴率は若干の改善を見るだろう。これは人気の衰えたプロレスラーやアイドルが引退興行で最後に観客を引き寄せて一儲けするのと同じ構造である。ただ、大変なのはその後の新番組だ。
フジテレビ側としては視聴率低迷のテコ入れとして新しい風を……と思っているのであろうが、後釜番組は話題性だけで当初は「いいともの後釜ってどんな番組なのだろう?」と好奇心を抱く層から一時的に見られても、仮におなじみの変わり映えのしないSMAPの中居さんなどがメインを務めるのであれば、早晩、彼等は離れていく。
そして予想されるのは、誰がタモリに入れ替わったところで、後釜番組の視聴率は、低迷する「笑っていいとも!」の視聴率よりもおそらく下がるだろうということだ。これはリストラの必要に迫られて、虎の子までリストラしてさらに右往左往する企業を思い起こさせる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら