不登校児をゼロにした元中学校長の「非常識」 子どもを育てる学校マネジメントとは何か

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──上位目標?

集会時のあいさつでも、中川西中の教育理念は自立貢献ですね、との言葉から必ず始めた。生徒の皆さんが教育を受けているのは、大人になったときに自立するため。貢献も大それたものでなくて、自分がいるから家族が幸せとか、あるいは友だちに迷惑をかけないとかいったことも貢献に値し、貢献にはいろいろな形があると子どもたちに言ってきた。

不登校生徒をゼロに

──不登校生徒をゼロにしたそうですね。

ドイツ発祥のイエナプランの考え方を多様に取り入れた。ただ、イエナプランは中でも初等教育との親和性が高い。中学校全体で採用するものではないととらえ、異年齢学級や自分で時間割を決めるなどの形で取り入れた。

中川西中では、30人いた不登校が今年はゼロという形まで改善され、前任の市ヶ尾中でも、600人の学校で不登校が16〜17人いたものが、転任のときにはゼロになっていた。

──全国では不登校が13万人を超えるとの統計も。

平川理恵(ひらかわ りえ)/1991年リクルート入社。1999年留学仲介会社を起業し10年間経営。2010年に公募で女性初の公立中学校民間人校長として横浜市立市ヶ尾中学校に着任。2015年に同市立中川西中学校長、中央教育審議会教育課程企画特別部会委員。2018年4月から現職(撮影:今井康一)

きちんと居場所を作ってあげる。そこにピカイチの先生を置き、その子に合ったカリキュラムを用意すれば、必ず学校に来るようになる。毎日でなく、その子が体調や状況に合わせて、登校するかどうかを自分の主体性で決める。毎日来なければいけないという呪縛から解き放つことも大事だ。

毎日、決まった席に座って、ただ「授業劇場」を見てばかりでは登校をボイコットしたくなる。自分から登校日を選ばせると、週休4日の子も日を選んで来る。大人の思い込みを子どもに押し付けるのでは、不登校はなくならない。不登校は今の教育を子どもが嫌だと言っている表れだからだ。

2割の子はノーと言っていると思ったほうがいい。この子らには違うものを提供しなければならない。小中高の時代は人と人との距離を理解する時間だ。この試行時間に引きこもりになったら、今後どうやってソーシャルスキルを構築するのか。その子の人生を考えたらつらいものがある。

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