セルフ飲食店で「席取り」して盗難にあう悲劇 注文前に席の確保を勧める店側の責任は?

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店側が預かった荷物がなくなったり壊れたりした場合には、不可抗力(たとえば災害など)でないかぎり、損害賠償請求ができる(商法594条1項)が、席取り用に置いた荷物はこれにはあたらない。お店が預かった荷物ではないからだ。

店員が不注意でなくしたり壊したりした場合にも損害賠償請求ができる(商法594条2項)が、これもあたらないだろう。

要するに店内で席取り用に置いた荷物に関しては、盗難に遭ってもお店に責任は問えない可能性が高いということだ。その意味では自己責任であり、高価なモノを置きっぱなしにしないように十分注意をする必要がある。

どのような対策が考えられるか

お店側も、席取りにふさわしいモノを持たない消費者もいるのだから、席取り専用のプレートを用意する必要もありそうだ。

席取りのために札を用意しているお店もあります。写真はイメージ(写真:baitooooooong / PIXTA)

さらには、事前の「席取り」をやめて、スタッフが空席を確認したのちにオーダーを取るようにするなどの対策もすべきと思う。

いずれにしても、大事な荷物が盗まれたら消費者も店側も嫌な思いをするし、消費者自身の事後対応はたいへんだ。

英語にはストリートワイズ(streetwise)という言葉もある。その地域で生き抜く常識を理解しようという意味だ。

残念ながら日本も安全はタダではないことを再確認する必要がある。

細川 幸一 日本女子大学元教授

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ほそかわ こういち / Koichi Hosokawa

専門は消費者政策、企業の社会的責任(CSR)。一橋大学博士(法学)。内閣府消費者委員会委員、埼玉県消費生活審議会会長代行、東京都消費生活対策審議会委員等を歴任。著書に『新版 大学生が知っておきたい 消費生活と法律』、『第2版 大学生が知っておきたい生活のなかの法律』(いずれも慶應義塾大学出版会)等がある。2021年に消費者保護活動の功績により内閣総理大臣表彰。歌舞伎を中心に観劇歴40年。自ら長唄三味線、沖縄三線をたしなむ。

 

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