アルパインが「物言う株主」から狙われた必然 アルプス電気との経営統合に「待った」

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ただ、ほかのアルパイン関係者からは「発表から統合までを短くしようと思えばほかにも方法はあったが、社員感情への配慮で早めに発表した」と明かす。社内からは「脇の甘さがあったと言われても仕方ない」と、物言う株主への対策が不十分だったとの声も出ている。

M&A(企業の合併・買収)に詳しい服部暢達・早稲田大学大学院客員教授は、「M&Aの鉄則は発表後にすぐさま行うこと。発表から1年以上かけるのは業績の変動リスクなど問題を起こす時間を与え、すきを見せているのと同じ」と指摘する。

経営統合に向けた「前哨戦」

統合の是非は今年12月に開かれる臨時株主総会で決議される予定だ。その際には出席株主の3分の2の賛成が必要になる。

オアシス・マネジメント・カンパニーのセス・フィッシャー氏。株主提案の票固めに自信を見せる(編集部撮影)

フィッシャー氏は6月に開かれる定時株主総会を「(統合の是非を問う)12月の総会に向けて、(統合阻止ラインの)3分の1以上の株主を味方につけられることを示す前哨戦」と位置づける。株主提案を通すためには過半数の賛成が必要になるが、今回の勝敗ラインはあくまで3分の1に置いている、というわけだ。

6月に入って、米議決権行使助言会社インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)が、オアシスの株主提案に賛成の意向を表明した。さらに、アルパイン株を保有するとされる米投資ファンド、エリオットマネジメントがオアシスに賛同するとの見方も浮上する。フィッシャー氏は「ほかの株主には手紙や電話による働きかけを行っており、現時点で好意的な反応をもらっている」と、票固めに自信をのぞかせる。

アルパイン側は、国内の機関投資家の多くがアルパイン株とともにアルプス電気の株も保有しているため、統合への反対はそれほど出ないと見る。だが、現時点で「個人投資家や一部の機関投資家がオアシスに同調する可能性もあり、3分の2を確保できるかは見通せない」(アルパイン関係者)。仮に今回の総会でオアシスの提案に3分の1以上の賛成が集まったとしても、現時点で統合における交換比率を変える予定はないというが、「最悪の場合、TOBなりほかの統合方法を取るかもしれない」(同)。

株主の理解を得て、統合への道筋をつけられるのか。アルパインの経営陣が安心して統合作業に向かうのはまだ先になりそうだ。

劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。1994年台湾台北市生まれ、客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説を研究している。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、映画・アニメが好き。

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