中村獅童「分身歌舞伎」を実現したNTT新技術 企業の"お助け役"で国内事業の底上げ狙う
毎年4月末に千葉・幕張メッセでドワンゴが主催する動画の祭典「ニコニコ超会議」には、恒例となった人気イベントがある。その名も「超歌舞伎」だ。伝統的な歌舞伎に最新のデジタル技術を融合させた演出が特徴で、従来の演目とはまったく異なる。
今年披露された超歌舞伎「積思花顔競」(つのるおもいはなのかおみせ)は主演に歌舞伎役者の中村獅童さん、バーチャルシンガーの「初音ミク」を据え、5000人の観客がホール会場に詰めかけた。通常の歌舞伎では客層は40代以上が中心だが、会期中の2日間は10代や20代、小さな子ども連れの家族も目立った。
中村獅童さんの分身が浮かび上がった
たとえば、舞台上の獅童さんの姿を瞬時に別画像の背景と合成した動画をスクリーンに大映しにしたり、躍動する獅童さんをコピーした映像が舞台上に複数投影され、まるで分身しているかのように見せたりした。こうした技術を駆使した演出が若い世代の注目を集め、超歌舞伎は今年で3年目を迎えた。
公演の合間に報道陣の取材に応じた獅童さんは、伝統と最新技術が融合する超歌舞伎について、「若い方たち、サブカルチャーやデジタルが好きな方に、少しでも歌舞伎に興味を持ってほしくてやっている。伝統や古典を守りつつ革新を追求する生き方をこれからもしていきたい」と語った。
この新しい試みを技術面で支えるのが、NTTの映像音声処理技術「Kirari!(キラリ)」だ。その場で撮影した映像のデータから必要な被写体を瞬時に背景と区別して抜き出し、リアルタイムで映像として再現する技術だ。NTTのサービスイノベーション総合研究所が2015年ごろから開発・改良を続けている。普通の動画撮影などとは違い、必要な被写体だけを抽出できるため、超歌舞伎のような演出が可能となる。
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