「中東の憎悪」がなぜか欧州に向かう根本理由 戦火の「欧州・中東200年史」から読み解く

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移民2世の関与も強く疑われた結果、極右勢力である国民戦線(FN)が移民排斥を訴えて支持を伸ばして台頭した。経済成長のための「労働力」は、今やテロを起こす「犯罪者」として扱われることになった。

欧州の収奪はいまも続いている

2001年9月11日米同時多発テロ事件が発生、2004年3月マドリードで鉄道テロにより191人が死亡、2005年7月にはロンドンでも同時多発テロにより56人が死亡した。それ以降、欧州諸国はイスラーム主義者に対する制圧を一段と強化した。

それにとどまらず、欧州諸国は周辺国の独裁政権に対してもイスラーム主義者に対する弾圧を支援・容認した。たとえば当時独裁体制を強めていたチュニジアのベン・アリ大統領の強硬姿勢に対してフランスのジャック・シラク大統領は全面的に支持を表明するとし、ベン・アリ大統領(後に中東民主化運動「アラブの春」の引き金を引いた)の手腕を評価に値すると賞賛した。

2007年、首相府官房国防総局・国際関係戦略局局長にインタビューした際、フランスの政治的・経済的協力が、同地域の強権政治の延命に手を貸し、民主化を阻害しているのではないかと質問した。「極論すればフランスとしては、テロリストさえ捕まえてくれれば、(これらの国の)言論などどうでもいい。フランスの協力がこれらの強権政治体制を支えているとみなされるのであれば、そう取られても仕方がない。それが政治である」と答えたことを今でも印象深く覚えている。

中東では、欧米諸国が口にする民主主義は、容易に独裁者に道を譲る表面的で実態のないものだった。テロが蔓延する自由より、抑圧的な強権体制のほうが結局欧米諸国には都合がよかったのである。

このように中東諸国の歴史は、つねに内、すなわち国内の権威主義統治者(および警察機構)と、外、すなわち欧米の偽善者に収奪され続けてきた歴史である。米国のエルサレムへの大使館移転問題を見てもわかるように、今もなお、恣意的な欧米諸国の関与によって苦しんでいるのだ。

福富 満久 一橋大学大学院社会学研究科教授

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ふくとみ みつひさ / Mitsuhisa Fukutomi

1972年福岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。2005年早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。2010年同博士後期課程修了(博士 政治学)。その間、2009年パリ政治学院(Sciences Po)プログラム・ドクトラル修了(Ph.D. 国際関係学)。2012年一橋大学大学院社会学研究科准教授、2015年より現職。2015年8月~2016年3月カリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)オルファレア国際問題研究センターリサーチフェロー。著書に、『中東・北アフリカの体制崩壊と民主化』(岩波書店、2011年)、『L’autoritarisme dans la structure politico-economique internationale』(Dictus Publishing, 2012)、『国際平和論』(岩波書店、2014年)、『Gゼロ時代のエネルギー地政学――シェール革命と米国の新秩序構想』(岩波書店、2015年)など。

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