日産「リーフ」刷新でも大衆EVへの遠い道のり 新型投入から8カ月、売れ行きはいま一つだ

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都内の商業施設で充電中の新型「リーフ」。公共充電設備の整備は進んでおり、今後のEV普及には集合住宅への設置拡大が欠かせない(編集部撮影)

日産は刷新時、普及のネックだった航続距離や充電インフラなどを改善したと強調したが、消費者に十分に訴求できているかは疑問だ。新型では最長航続距離が旧型比1.4倍の400キロメートルに伸びた。ただ、「リーフの実航続距離は250~300キロメートルで、不安を持つお客も多い」(別の日産ディーラー)との声も根強い。

価格の壁も依然高い。大半の購入者が選ぶモデルは諸費用を含めて400万円前後する。国の補助金40万円を利用しても輸入車とさほど変わらず、「大衆化」されているとは言いがたい。

課題は山積するが、日産も手をこまぬいているわけではない。昨年からNECなどと共同で、リーフ購入者が居住する首都圏の分譲済みマンションに初期費用実質ゼロで充電器を設置する取り組みを始めた。

経済産業省の調査では、ユーザーがEV購入をためらう理由として、価格や航続距離に次いで、自宅に充電設備がない点を挙げる。公共充電設備は普通と急速を合わせて2万9000基とガソリンスタンド並みに整備が進んできたが、日産も全住宅の4割を占める集合住宅への充電器設置がカギを握ると見る。

中古「リーフ」の価格引き上げ狙う

さらに日産は、中古価格の低さが新車購入を敬遠する要因になっているとして、使用済みリチウムイオン電池を回収・再生して販売する事業も3月に始めた。中古価格低迷には、電池の経年劣化で航続距離が減少し、商品価値が下がるという背景があった。そこで性能保証した安価な再生電池を購入できるようにして、新車と中古車双方のユーザーの懸念を払拭するのが狙いだ。

年度末商戦で盛り上がるはずの3月には販売台数が早くも減少トレンドに入った。コアなEVユーザーには一定程度行き渡ったと見ることもできる。今秋にも追加される電池容量1.5倍のモデルも含めて、日産の地力が試されている。

岸本 桂司 東洋経済 記者

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きしもと けいじ / Keiji Kishimoto

全国紙勤務を経て、2018年1月に東洋経済新報社入社。自動車や百貨店、アパレルなどの業界担当記者を経て、2023年4月から編集局証券部で「会社四季報 業界地図」などの編集担当。趣味はサッカー観戦、フットサル、読書、映画鑑賞。

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