米朝首脳会談キーマン「ソン・キム」の正体 実務者協議の米代表団を率いる外交官

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すでに北朝鮮実務者とのコネクションを持っている人物として、また6カ国協議の非核化合意を前進させる役割を過去に担った人物として、キム氏はトランプ政権にとって貴重な戦力と考えられるようになっているようだ。トランプ政権は、以前より厳しい内容とはいえ、当時と似たような非核化合意を目指している。

北朝鮮はこれまでに合計6回の核実験を行ってきているが、このうち2回目〜5回目の核実験が行われた時期に、キム氏は北朝鮮問題を直接担当していた。また、米朝関係が今よりも難しい状況にあったときに、キム氏は米国を代表して北朝鮮と交渉した経験がある。

キム氏の後任はまだ決まっていない

キム氏の後任として北朝鮮担当特別代表を務めていたジョセフ・ユン氏が3月に辞任しているが、トランプ米大統領は未だに後任人事を行っていない。米朝首脳会談が数週間以内に行われる可能性がある中で、きわめて重要なポジションが空席のままになっているということだ。こうした状況からキム氏が米朝外交の最前線に引き戻された可能性もある。

伝えられるところでは、キム氏は板門店共同警備地区にある北朝鮮側施設で、当初6月12日にシンガポールで予定されていた米朝首脳会談に向けた実務者協議を行っている。

トランプ大統領は今月24日、米朝首脳会談を唐突にキャンセル。しかし、北朝鮮が比較的大人の対応をとったことに加え、わずか2日後の26日には韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長が電撃会談を実施。米朝協議再開への道が開けた。

米朝首脳会談は本当に実施されるのか、実施される場合は当初予定どおり6月12日になるのか、それ以降のタイミングになるのか――。実務者協議を経て、こうした疑問に一段と明確な答えが出るかもしれない。

(文:コリン・ズワーコ)

筆者のコリン・ズワーコ氏は北朝鮮ニュースの記者で、韓国ソウルを拠点とする。
「北朝鮮ニュース」 編集部

NK news(北朝鮮ニュース)」は、北朝鮮に焦点を当てた独立した民間ニュースサービス。このサービスは2010年4月に設立され、ワシントンDC、ソウル、ロンドンにスタッフがいる。日本での翻訳・配信は東洋経済オンラインが独占的に行っている(2018年4月〜)。

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