米朝首脳会談キーマン「ソン・キム」の正体 実務者協議の米代表団を率いる外交官
2008〜2011年にかけてキム氏は、北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議の特使として、北朝鮮が核施設を停止・封印する見返りにエネルギー・経済支援を行うとした2007年合意の実施に尽力。その後、米朝合意が破棄状態に陥ってからは、交渉再開を目指して奔走した。
キム氏は2008年6月に行われた北朝鮮の寧辺(ヨンビョン)核施設の冷却塔爆破に立ち会い、「(核施設)無能力化への非常に重要なステップ」とコメントしたことがある。その前年には、冷却塔破壊に向けた準備の一環として寧辺の核施設に足を運んでもいる。
キム氏は2007年の合意が立ち消えとならないよう、2008年の夏場を通して引き続き北朝鮮と実務者協議を続けたが、交渉は同年12月に決裂。その後、駐韓米国大使としての3年間を挟んで、2014年には北朝鮮担当の特別代表として、再び北朝鮮と直接交渉する立場になった。
制裁には前向きな姿勢
当時の米朝関係は、主にミサイル発射実験と国連による制裁措置に彩られていた。北朝鮮が4回目と5回目の核実験を行ったのもこの時期に当たる。5回目の核実験が行われたのは2016年9月。キム氏が特別代表の職にあった最後の時期、駐フィリピン米国大使に任命されるわずか1カ月前のことだった。
北朝鮮による5回目の核実験を受けて行われた記者会見で、キム氏は「制裁や圧力が即座に成果を生んでいないことにいら立ちと懸念」を抱いていることを認めた。が、「北朝鮮の問題行動を支える外貨の獲得は難しくなった」として、制裁には前向きな発言をしている。
キム氏は2016年6月に北京で行われた国際会議「北東アジア協力対話」で、北朝鮮の崔善姫(チェ・ソンヒ)現外務次官と鉢合わせてもいる。崔氏は6カ国協議でも北朝鮮側の交渉担当者として中心的な役割を担っていたが、今回の米朝実務者協議では北朝鮮側を率い、キム氏と交渉することになった。
崔氏とキム氏は顔なじみの可能性が高い。ただ、米国政府は、2016年に北京で両氏が公式に会合を持ったことはないとしている。