大林組、同業も驚いた「新ルール」の徹底ぶり 厳しい再発防止策が業界で波紋を呼んでいる
大林組の動きは、談合撲滅に向けた一歩として業界にどこまで波及するのか。同業他社からは「わが社は営業担当者のみにとどめている。全社員まで広げる必要はないのでは」「社員のプライバシーの問題にもかかわるので難しい」という消極的な声が目立つ。
ある中堅ゼネコンの幹部は「ゼネコンに就職したばっかりに、同業他社に就職した同級生と簡単に会えなくなってしまうのはいかがなものか」と漏らす。
一筋縄ではいかない談合撲滅
他社からは「従業員の拘束だけでは問題は解決しない」という声も上がる。公正取引委員会が5月、農林水産省OBを通じて入札情報を入手していたとして準大手ゼネコンのフジタに処分を下す方針を固めたのは、その一例だ。
国土交通省を筆頭に、ゼネコン各社は工事発注者である行政機関のOBを社員に迎えている。彼らの役割は、入札したが落札できなかった工事について「添削」することだ。
近年は入札金額だけでなく、工法や環境対策など各社の提案を多面的に評価して落札者を決める「総合評価方式」が主流だ。落札業者決定後、入札参加者に開示されるのは各項目に基づく点数のみで、なぜその点数になったのかは知らされない。「金額だけで決まる入札よりも、ある意味ブラックボックスになった」(準大手ゼネコン幹部)。
そこでOBは古巣のつてを通じて点数の根拠を聞き出し、ゼネコンは次の受注に向けて提案を変えていく。工事の入札は終了しているため直接「談合」とは呼べないが、一歩間違えれば独禁法に抵触しかねない。
「工法にも『はやりすたり』がある。今の役所がどんな工事を求めているのかを知るべく、最初から落札する気のない工事でも、入札に臨むことがある」(中堅ゼネコン役員)
大林組の新ルールに対して及び腰な建設業界だが、法令順守に向けた包囲網は形成されつつある。公正取引委員会の杉本和行委員長は東洋経済の取材に対して「海外では担当者同士が会って話しただけでアウト。日本でも国際ルールにのっとって判断していく」と建設業界に対して牽制球を投げた。
大林組が策定したルールも、世界的に見れば決して厳しすぎる内容ではない。それどころか、他社も同水準のルールを求められる可能性がある。
どうすれば談合を防げるのか。建設業にとって古くて新しい問題に対し、大林組はさながら「性悪説」とも取れる形で、1つの回答を出した。
空前の好景気に沸く業界だが、これを教訓とせず、一部の従業員による勇み足を許せば、途端に足をすくわれる。
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