大林組、同業も驚いた「新ルール」の徹底ぶり 厳しい再発防止策が業界で波紋を呼んでいる

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法令順守の姿勢を打ち出した同社だが、建設業界の中でその動きが現れたのは最近のことだ。

「名刺はここにお入れください」――。今から10~15年ほど前まで、国土交通省や地方自治体の工事担当部署には、名刺箱が置かれていた。名刺を入れるのはゼネコンの営業担当者。お目当てはもちろん、役所が発注する工事を受注することだ。

むろん、名刺の枚数、つまり役所に顔を出した回数だけで工事がもらえるわけではない。だが、「参考程度」に名刺の枚数が数えられることはあったという。

指名競争入札を採用している公共工事では、行政機関は名簿に登録されているあまたのゼネコンから、工事の実績や会社の規模などを基準に、入札に参加する業者を指名する。指名されなければそもそも入札に参加できないため、ゼネコン側も自社を指名してもらおうと営業に奔走する。

談合は行政側にも都合がよい

ゼネコン側の利益ばかりが強調される談合事件だが、発注者側にもメリットがある。工事に誰も入札しなければ、価格設定や工期、仕様がまずかったということになり、担当者は責任を問われる。

施行能力のない会社が落札してしまい品質問題が生じた場合も、担当者の責任問題に発展しかねない。実績のある業者による落札があらかじめ決まっていれば、そうした心配はなくなる。

だが2000年代前半には数十~100社以上のゼネコンを巻き込んだ大規模な談合事件が多数発生し、さらに2005年には旧日本道路公団の元理事が鋼橋工事の談合を主導していたことも発覚した。

2006年には課徴金額を引き上げた改正独禁法や公益通報者保護法が相次いで施行され、談合行為に対する世間の目はますます厳しさを増している。

ゼネコンと行政機関の距離感に対する風当たりも強まり、自治体は次々と名刺箱を撤去。それどころか、ある都道府県庁の工事担当部署では「ここから先、工事関係者の立ち入りはご遠慮ください」という掲示までするようになった。

以来、談合の摘発件数は緩やかな減少傾向にある。

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