鉄道「現場職員」は30年でこれだけ減っていた JRはほぼ半減、トラブル多発の遠因?
旧国鉄は合理化のため1982年度を最後に新卒採用を中止しており、分割民営化によってJRが発足するまで新規の採用はなかった。さらに、主に鉄道の現場を担う高卒社員の採用は1991年度にJR東日本と東海が開始するまで行われていなかった。人員削減もさることながら、採用を控えていた時期があることで職員数が減る結果となったのだ。
これが現在のJR各社の社員の年齢構成に大きな影響を及ぼしていることは、JR各社の現在の年齢構成を見るとよくわかる。たとえばJR西日本が公開している「データで見るJR西日本2017」によると、2017年4月1日現在、同社の社員は2万9150人。平均年齢は40.6歳だが、55歳以上の社員が7870人、30~34歳が6080人なのに対し、40~44歳は1500人、45~49歳は800人、50~54歳は2450人である。
国鉄末期にあたる年代は50~54歳(1963~67年生まれ)となるだろうが、最も少ないのはそれより下の45~49歳だ。この数字からは、国鉄分割民営化のあおりで採用が一時行われていなかったことに加え、1990年代以降の景気低迷からいわゆる就職氷河期にかけて採用が抑制されていたことも見えてくる。このように一時期続いた採用抑制が年齢のギャップを生み、若手と高齢のベテランをつなぐ中間層が少ないという現状につながったといえる。
外注化や分社化も進んだ
一方、いわゆる就職氷河期の時代には別の流れも起こっていた。アウトソーシングや分社化の流れだ。
2000年代、日本の各企業では、コア業務を正社員が行い、そうではない業務を子会社や下請、非正規にさせるという分業体制が進んでいった。それにより、人件費の削減や効率的な企業運営を行うという流れが定着した。鉄道業界でも分社化は行われており、たとえば東武鉄道は、鉄道車両の保守を「東武インターテック」、保線を「東武エンジニアリング」、駅業務を「東武ステーションサービス」に分社化している。線路の工事などを外注するのはどの鉄道会社でも一般的だ。
この状況について、前記の交通政策審議会・鉄道部会の「技術・安全小委員会」は、「鉄道事業者において経営効率化の視点から進められているアウトソーシングは、アウトソーシング先が自社の子会社等であり、人事交流等により技術継承の機会が持てる場合は良いが、まったくの別会社である場合には、技術の継承が困難となるおそれがある」と指摘している。
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