日大は、どこで判断を間違えてしまったのか 大学全体のブランドまで毀損してしまった

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ディフェンスラインの設定ミス、会見のお粗末さをもって、日大の無能さをあげつらう声があります。しかし私はそうは思いません。日大の中にいる多くの教職員が、一般国民の多くと同じように日大の繰り返す失敗について止めたいと考えていたはずです。しかし、まともな声は意思決定には反映されていないのでしょう。

選手を干して、違反プレーを強制するように追い込むような命令系統、不健全な意思決定システムが支配していると想像すると、長期的な視野も論理的な思考もなく、学校をして誤ったディフェンスラインを設定させ、広報がお粗末な声明を出して炎上を招き、必要もない会見を衝動的に設定し、ろくに準備もせず丸腰でそこに登場したことも自然に思えます。

さらに組織としての問題を感じたのは、22日に日大広報部がコメントした「指示はなかった」という内容と、同じく日大広報部の記者会見におけるメディアに対する極めて敵対的な司会です。広報部といえば大学そのものですから、日大は、組織全体が前監督と立場を同じくする旨を積極的にPRしたことになります。

教職員や現役学生、卒業生をも巻き込んだ

広報部に所属する司会者がメディアに「あなたのせいで日大のブランドが落ちますよ」と言われ「落ちません!」と即答したとき、前監督・コーチと広報部は悪い意味で一体になっています。

日大という、全国に知れ渡った教育機関のブランド全体が毀損した瞬間です。大学の規模やこれまで積み重ねてきた歴史を考えると、この損失は極めて大きいと言わざるを得ません。

日大には2000人を超える教職員と約7万人の現役学生、そして卒業生を軸に無数の関係者を擁していますが、この対応ではすべてを巻き込んでしまいます。日大そのものと前監督・コーチは立場が違うことを明示し、距離を置くこともできました。そうしなかったため、今回の問題を「部」の中に留めることはかなわず、日大全体に波及することは避けられなくなったのです。

もし組織にきちんと議論する土壌、多くの人の意見が容れられる土壌があったなら、このようなミスが起きたでしょうか。

私は日大の組織構造についてはほとんど知りません。しかし、本件の闇は、前監督やコーチの個人的な資質ではなく、不健全な意思決定システムにあるように思われてなりません。日大という巨大な組織は加害選手だけを切り捨てる一方、たった1人の前監督を守るという実現不可能な目的のため、教職員と学生を生贄に捧げ、莫大な価値のある大学ブランドを毀損するに至ったのですから。

それでも、私は日大が気の毒だとは思いません。これは部活の問題が大学に運悪く波及したのではなく、大学という組織の意思決定に最初から問題があったためで、すなわち、やっぱり組織全体の問題であるのです。日大に対しては、本件のような事件を二度と起こさず、大学の信頼を回復するため、前監督やコーチの処遇以前に、大学に関する意思決定のシステムを抜本的に考え直してもらいたいと思います。

田畑 淳 溝の口法律事務所所長

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たばた じゅん / Jun Tabata

東京大学(私法コース) 慶應義塾法科大学院卒業。2007年弁護士登録。東京と横浜の法律事務所で勤務ののち、2010年川崎市溝の口に事務所を開設。2015~2017年にかけて川崎支部幹事。中小企業の支援を中心に、不動産問題、家事事件などを幅広く手掛ける。

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