「富裕層監視」のため世界各国が連携する事情 国税庁も「税金逃れ」対策を強化している

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しかし近年は、タックスヘイブンの社会的な問題点が多く取りざたされています。本来支払われるべき税金が支払われず、税収が減ってしまうわけですから国にとっては大きな不利益です。それに、ちゃんと税金を支払っている企業や個人のことを考えると不公平でもあります。

また、タックスヘイブンは情報の機密性が高いのも特徴で、誰が会社を設立したかなどの情報がまったくわかりません。そのため、テロ組織や犯罪組織のマネーロンダリングの温床となっているとも指摘されています。

注目を集めた「パナマ文書」と「パラダイス文書」とは?

タックスヘイブンが大きく問題視されるようになったきっかけは、冒頭でも出てきた「パナマ文書」と「パラダイス文書」の役割が大きいです。

パナマ文書とは、ドイツの南ドイツ新聞が匿名の情報提供者から入手した膨大なデータを、国際的な犯罪を取材、報道する「国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)」とともに分析、2016年5月に公開したもの。パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」が作成した21万以上のオフショア法人(タックスヘイブンを利用している法人)に関する情報が記載された内部文書です。

それまでモサック・フォンセカは、他国の法人や個人のためにタックスヘイブンでの企業設立支援を行っていました。タックスヘイブンでも法人を設立するためには、登記をしなければなりません。登記に必要な法人の代表者の氏名や住所、法人の本店所在地、法人の目的などが書かれたデータが流出した結果、21万社余りの事業実態がないペーパーカンパニーの存在や、世界各国の富裕層や政治家、著名人たちの税金逃れや資産隠しが明らかになって注目を集めました。

パナマ文書の衝撃から1年半余り。2017年11月には、国際調査報道ジャーナリスト連合によって「パラダイス文書」の存在も明らかにされました。それは、タックスヘイブンにある法律事務所や法人設立サービスを行う企業の顧客データが記載された内部文書でした。

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