「定期預金だけの運用」では幸せになれない 銀行の「超低金利預金」から「卒業」しよう

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よく、「いったい老後資金はいくら必要なのか?」という話題が出ますが、一般論として、国が提示する公的年金の受給額を出しながら議論するのはナンセンスです。なぜなら、国の年金は、公的年金加入中に負担した保険料に見合う額しか受け取れないからです。特に会社員の場合、支払う保険料は給与に比例しますから、現役時代の給与が高ければ老齢厚生年金の額も大きくなり、給与が低ければ、将来の年金も少ないという現実があるからです。

では、自分が将来受け取れる年金はいったいいくらなのか? これを知るために日本年金機構が発行する「ねんきん定期便」があるのですが、残念ながら50歳未満の人に届くねんきん定期便は、「発行時点までの加入実績に応じた年金額の記載」にとどまっており、将来の年金見込額までは書かれていないのです。また、50歳以上の人の場合でも、「現状の給与収入が60歳まで変わらない」という前提で見込額が記載されており、国の情報は不親切です。

そんな中、大和証券のiDeCoサイトでは「LINEでねんきん定期便試算」というユニークなサービスを始めました。これはもらったねんきん定期便をカメラで撮影して、いくつかの簡単な質問に答えるだけで将来の年金額がわかり、さらに老後の備えが実際いくら必要なのかも提示してくれます。お手軽だし無料で使えますから、年齢を問わず試してみると良いでしょう。きっと、iDeCoで月々2万3000円の積み立てをしていても、上記の30歳の会社員の30年積み立ての例でもわかるとおり、定期預金の積み立てだけでは十分に老後資金を確保することが難しいと感じるのではないでしょうか。

短期でなく20年長期投資なら、投資収益率が年2~8%に

「やっぱり定期預金では難しいのか……」というところまではわかったとして、そこでどうするかです。実は金融庁がこんなデータを出しています。国内外の株式・債券に積み立て・分散投資した場合、保有期間5年では収益率がマイナスとなるケースもあったが、20年の長期保有では投資収益率が2~8%(年率)に収れんしたというデータを発表しています。これはとても参考になる情報です。

このデータは、1985年以降の各年に、毎月同額ずつ国内外の株式・債券の買い付けを行い、それぞれの調査期間で保有した収益率を比較しています。保有期間が5年であった場合、投資を始めたタイミングと終了したタイミングの違いで、収益率がマイナスになってしまったケースも少なからずあり、確かに5年という短い期間での運用は成果にバラツキがあるのだと理解することができます。

一方、20年という保有期間であれば、投資開始時期にかかわらずすべて2%から8%の収益率に分布が収まっています。最も多い成果は4%から6%ですから、コツコツ積み立てをして20年保有すれば、人気ドラマの決めぜりふではありませんが「失敗しない」のです。

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