スバル水平対向エンジンの音が変わった理由 独特のボクサーサウンドは聞けなくなるのか

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スバルのエンジンが、ことに低速トルクが足りず、燃費もよくないと言われてきたのは、こうした根本的な原因があった。これを解消しようと、1990年代後半から吸気側の混合気の充填効率を高める工夫と同時に、排気側も前後のシリンダーで排気管を同じ長さとなるよう集合のさせ方を工夫し、排ガスの抜けをよくした。

その改良前の1980年代前半に、それまでのプッシュロッド方式から、OHC(オーバー・ヘッド・カムシャフト)方式へ、排気量1800ccエンジンのみバルブ駆動のさせ方を変更している。ただ、そのEA81型も、従来のEA52から基本部分は変わっていないので、なお「ボロロロッ」とか、「ボロボロボロ~」という排気音は残っていた。

排気音が変化した背景

スバルの排気音が変化した背景に、排ガス浄化や燃費に対する規制の一段強化が行われだしたことも影響しているだろう。1991年(平成3年)から、運輸省(当時:現在は国土交通省)は排ガスや燃費の認証を行うモード測定に、10・15モードを導入した。これは、その前の1973年(昭和48年)から施行された10モードに比べ、郊外での走行も視野に走行速度をやや高めただけでなく、冷間時からのエンジン始動も計測条件に加えた。

エンジンが冷えた状態から始動し、暖気し、その過程での排ガス浄化性能や、暖気中は走らないので停車したまま燃料を消費することによる燃費の悪化は、クルマの環境性能に大きく影響を及ぼす。より実用的な計測方法となり、排ガス規制や燃費性能を満たすためにはエンジン側に対策が求められることになる。

対策にはいくつかの手立てはあるが、排気を滑らかにし、各シリンダーでの燃焼を毎回効率よく行い、素早く暖気を済ませ、短時間で走り出せるようにするには、各気筒からの排気管の長さを揃えることも重要だ。結果、スバルの水平対向エンジンの排気音も変わるというわけである。

この先、さらなる燃費向上と排ガスのゼロエミッション化が進められるうえで、電動化は避けて通れない。また、今日でもアイドリングストップは少なくとも不可欠であり、停車中にエンジン排気音そのものを聞く機会もまた、大きく減っていくことになる。

スバルらしい排気音は、さらに郷愁となっていくだろう。

御堀 直嗣 モータージャーナリスト

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みほり なおつぐ / Naotsugu Mihori

1955年、東京都生まれ。玉川大学工学部卒業。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。日本EVクラブ副代表としてEVや環境・エネルギー分野に詳しい。趣味は、読書と、週1回の乗馬。

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