スバル水平対向エンジンの音が変わった理由 独特のボクサーサウンドは聞けなくなるのか
スバル(SUBARU)は、昨年4月まで正式社名を富士重工業といい、その起源は戦前の中島飛行機にさかのぼる。
中島飛行機は、群馬県の実業家であり、また海軍軍人、政治家でもあった中島知久平が、1917年(大正6年)に創業した航空機メーカーである。戦時中の陸軍戦闘機「隼」や「疾風」はことに有名であり、ほかにも陸海軍の戦闘機や爆撃機、偵察機、輸送機などの製造を行ってきた。
戦後は自動車開発と製造を行うようになった
戦後は、軍需とつながりのあった日本の航空産業は解体され、中島飛行機も自動車や精密機械など各種製造業に分かれて事業を継続し、1つが富士重工業として自動車の開発と製造を行うようになった。富士重工業がまず開発したクルマは小型車だったが、時期尚早として試作車と一部実証実験車的な段階で終了し、軽自動車から販売を始め、それがスバル360である。続いていよいよ小型車の開発と製造に進み、それがスバル1000になる。
スバル1000に搭載されたエンジンは、先のとおり水平対向4気筒タイプで、これは、中島飛行機時代の航空機用星型エンジンから生まれた構想であるという。
星型エンジンとは、プロペラを回転させるクランクシャフトの周囲に放射状にシリンダーが並び、その姿が星型に見えることからそう呼ばれる。中島飛行機時代の星型エンジンは、9気筒、14気筒、18気筒などが代表的であったというが、その星型エンジンの水平2気筒を前後に配置したのが、スバル1000の水平対向4気筒エンジンの基になる。
スバル1000の時代の水平対向4気筒エンジンは、EA52型という型式名が与えられ、排気量は車名そのままの1000ccだ。吸気と排気それぞれバルブは1気筒当たり1つずつの計2バルブで、そのバルブはプッシュロッドで駆動される。
ちなみに今日のエンジンは、スバルの水平対向を含め直立型も同じように、吸排気バルブがそれぞれ2つずつの1気筒あたり4バルブ方式で、バルブは吸気側排気側それぞれ専用のカムシャフトで直接作動させる(カムからロッカーアームを介してバルブ駆動する場合もあるが、プッシュロッドとは異なる)。
前置きが長くなったが……吸気と排気は、今日ではクロスフロー(横断流れ)と呼び、吸気が入った反対側へ燃焼を終えたガスが排出される方式になっている。スバルの水平対向4気筒も同じだ。これに対し、吸気が入ったのと同じほうへ排気を出す方式もあり、これはカウンターフロー(逆流れ)と呼ばれる。
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