税金のかからない確定拠出年金の受け取り方 退職金のもらい方も考えれば「お得度」倍増!

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Dさんの確定拠出年金は、企業型のDCで6年。その後iDeCoで7年です。もし60歳で確定拠出年金の資金を一括で受け取ると退職所得控除は13年分、すなわち520万円使えます(残念なことに、実際はDCからiDeCoへの移換の際に手続きがおくれ、積み立てが中断された期間が1年あるので、それは退職所得控除にはカウントされません)。確定拠出年金の資金は現在400万円です。

一方、会社の退職一時金は600万円。会社を移り、53歳で今の会社に入ったので、65歳までの勤続年数を計算すると12年です。従って、退職所得控除は480万円(12年×40万円)です。

Dさんは、確定拠出年金の受け取りを据え置くとその分退職所得控除が増やせると思っていました。しかし、確定拠出年金はあくまでも掛金の拠出期間のみが「継続期間」としてカウントされますから13年以上には増やせません。

「退職金の5年ルール」をうまく利用する

むしろDさんの場合は、60歳で確定拠出年金を、65歳で退職金をそれぞれ一括で受け取ったほうが税制上有利になります。

どういうことでしょうか。退職金は受け取る前年以前4年内に他の支払い者から支払われた退職金がある場合は、それらの勤続年数の重複期間を含めずに退職所得控除を計算するというルールがあるのです。逆に言うと指定された期間以上前に受けた退職金の退職所得控除と今回受ける退職所得控除はそれぞれ全期間を認めるという意味です。つまり「5年空ける」と全然計算の仕方が違ってくるということです。

Dさんの場合、60歳と65歳、5年間空けた上で退職金を受け取ると、それぞれフルで退職所得控除が使えるのです。60歳で確定拠出年金を一括で受け取る際、400万円の資金は退職所得控除520万円を下回りますから課税はありません。また65歳で退職金600万円を受け取る際、退職所得控除480万円を差し引いた120万円の半分60万円が課税対象ですから、その結果3万円が所得税です。

Dさんからはさらに「退職所得控除が別々に使えるのであれば、退職金を65歳で受け取って、確定拠出年金の資金を70歳で受け取ったらどうか」と質問されました。実は確定拠出年金の資金に限り、前年以前14年内に受けた退職金があれば、退職所得控除の重複分は差し引くというルールがあるのです。Dさんは会社の勤続年数と、確定拠出年金の掛金拠出時期が7年重複しているので、この場合重複期間が退職所得控除の計算から差し引かれ、13年分ではなく6年分のみとなり、税制メリットが薄くなってしまいます。

以上4つの例を挙げましたが、これらはほんの一例で、実際は他の選択肢も考慮しながらシミュレーションをします。読者にとっては「なんだかなぁ~、確定拠出年金って面倒臭いなぁ~」という印象でしょう。しかし、確定拠出年金は、受け取り時期が自分で選べる特別な退職金なので、「より有利な受け取り方法が選べる分、制約が大きいのだ」と理解していただければそれで十分です。

いずれにしろ、一般の人にはなかなか理解しづらいルールかと思いますので、確定拠出年金の資金の受け取りを考える際には専門家に相談する方がいいということだけは覚えておいてください。また資金の受け取り方を考慮するのと同時に公的年金の受け取り方、おカネの使い方のプランニングももちろん大切です。後で後悔しないよう、しっかりと検討してください。

山中 伸枝 ファイナンシャルプランナー、FP相談ねっと代表

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やまなか のぶえ / Nobue Yamanaka

FP相談ねっと代表。一般社団法人公的保険アドバイザー協会理事。アメリカ・オハイオ州立大学ビジネス学部卒業。「楽しい・分かりやすい・やる気になる」ビジネスパーソンのためのライフプラン相談、講演を数多く手掛ける。大手新聞社主催のiDeCo(個人型確定拠出年金)やNISAセミナーの講師など登壇も多数。金融庁のサイトで、有識者コラムを連載。著書に『「なんとかなる」ではどうにもならない 定年後のお金の教科書』(インプレス)、『ど素人が始めるiDeCo(個人型確定拠出年金)の本』(翔泳社)、『100人以下の会社のためのiDeCo&企業型DC楽々活用法』(日本法令)ほか。公式サイト

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