コンビニから銀行まで、業種を超えて拡大する家事代行サービス
少子高齢化や女性の社会進出を背景に、掃除や炊事、洗濯など、あらゆる家事を代行するサービスが需要を伸ばしている。経済産業省の試算によると、2000年度に547億円だった家事支援サービス市場は、10年に1000億~1200億円に拡大する見通しだ。
その流れを象徴するように、暮らしの「現場」に最も近いコンビニエンスストアで、チケット取り扱いが始まっている。
昨年11月、業界3位のファミリーマートは家事代行チケットの販売を開始。専門会社の「ベアーズ」(東京)と協力し、掃除、洗濯から子どもの送り迎えなど、家事全般のサービスを提供する。店頭のチケット端末「ファミポート」で購入し、電話でサービス内容を打ち合わせる。代金は2時間半で9800円。2人のスタッフが家事サービスを担当する。
ファミリーマートが当初想定していたターゲットは高齢者。買い物代行など、身近な需要があると考えていた。だが、全体の4割超を占めたのは働く女性たち。商品本部の石井満氏は「利用頻度は月に2~3回程度で、掃除や洗濯の依頼が多かった。定期的に家事の一部を外注し、仕事に備えているようだ」と話す。
現在のサービス対象地域は首都圏と関西の一部のみ。今後は対象地域の拡大と、男性客への訴求にも力を入れる。「対象エリアの拡大はもちろん、行政と手を組むなど、地域に必要なサービスとして根付かせたい」(石井氏)。
首都圏を中心に家事代行サービスを展開するエフ・エイ・二四(千葉県)は、「整理整頓」に特化したサービスで独自性を打ち出す。
営業本部の加藤功マネジャーは、「主婦はキッチンにコンプレックスを持っている」と切り出した。それは、掃除ではなく「整理整頓」ができていないことだという。どの家庭でも、キッチン回りの収納棚には賞味期限切れの食品や、使わずにしまわれたラップがあるものだ。それらを一つひとつ賞味期限から確認し、使いやすく整理するのは「一般の主婦で3~4日を要する重労働」(加藤氏)。そこで、同社は整理整頓に絞ったサービスに乗り出した。
まず、収納の中に入っているものをすべて取り出し、使用頻度や顧客の身長などから収納場所を決めていく。迷わないように、使いかけのものは手前、重ねず横並びに収納するなど、独自のノウハウで次々に片付けていく。通常の家庭なら、スタッフ2人、3~4時間程度で作業が完了するという。
こうした家事代行サービスの需要を伸ばしているのは、20~30代の働く女性たち。総務省の社会生活基本調査によれば、共働きの夫婦に子どもができても夫の家事時間はなかなか増えず、妻に家事と育児の負担が重くのしかかってしまう、そんな実状が見えてくる。
そこで、家事労働の一部を「外注」することで、子育てをサポートするサービスが増えてきているのだ。