コンビニから銀行まで、業種を超えて拡大する家事代行サービス

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保育所などへの送迎に「子育てタクシー」が大活躍

業界を問わず広がりを見せる家事代行サービス。中でも珍しいのは、独自資格を持ったドライバーが子どもの送り迎えを代行する「子育てタクシー」だ。

「急な用事ができてしまったとき、安心して子どもを任せられるタクシーがあれば」という母親の声から出発したサービスだ。両親が残業で保育所に迎えに行けないときや、塾や習い事の送迎などに利用されるケースが多いという。

「子育てタクシー」は全国子育てタクシー協会(香川県)の登録商標。入会を希望するドライバーは、子どもとの手のつなぎ方や歩き方、コミュニケーションの取り方などについて協会の養成講座で研修する。地域の子育てサークルや、子育てに関する情報も学ぶ。

現在、子育てタクシー資格を持つドライバーは全国に約600人、54社に拡大。利用件数は着実に増加しているという。

また、金融機関では横浜銀行をはじめとする地方銀行54行が、女性専用の住宅ローン商品を開発。福利厚生会社と提携し、家事代行サービスなども提供している。「女性の住宅ローン利用はこれまでも相当数あった。需要の高いサービスをアピールし、さらなる利用を促したい」とは横浜銀行。

そのほか、ハウスクリーニングを中心に、警備や引っ越し会社にもサービスは拡大する。働く女性が増える中、家事代行サービスは将来性のある“有力商品”に育ちつつあるようだ。

ただし、市場の拡大が進む一方で、業界には急成長の「ひずみ」も生じ始めている。

急激な市場の拡大 にわか業者も横行

独自の認定資格講座など、家事代行サービスの普及活動を行う日本ハウスクリーニング協会の金子晴雄理事長は、「急激な需要増に対応しきれていない会社が多い」と指摘する。

金子氏は25年の経験を持つベテラン。事業を始めた1980年代は、掃除や洗濯などの「在宅サービス」は富裕層の利用が大半を占めていた。転機が訪れたのは00年ごろ。テレビCMの影響などで、エアコンのフィルター掃除がブームに。各業者に依頼が舞い込んだ。これを機に家事代行サービスの裾野も広がったという。

だが、業界は個人事業主が多く、その実力を示す資格もなかった。そのため、新規参入はたやすく、数カ月で蒸発するにわか業者も多い。「クリーニングを頼んだが、汚れがまったく落ちていない」「法外な料金を請求された」などの相談が協会に連日寄せられている。

旺盛な需要を控え、次々に新サービスが登場する家事代行。勃興期にある業界だけに、利用する側も情報を集め、慎重に業者を選別する努力が必要とされているようだ。


(週刊東洋経済)
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