東京駅の「京葉線ホーム」があんなに遠いワケ 新幹線の夢の跡に生まれた地下ホーム

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なぜ成田新幹線のターミナルを新宿に設けようと考えたのだろうか。記事は、以下のように説明している。

この主張の根拠は ●鍛冶橋をターミナルとすると、同新幹線が東京―成田間だけを結ぶいわば枝線的な変則新幹線となってしまう ●それよりも成田―鍛冶橋―新宿と結べば、上越新幹線や、計画中の中央、北回り両新幹線が将来完成した際、これら新幹線と東京国際空港(注:新東京国際空港=成田空港であろう)を結ぶことができ、さらに新宿駅を結節点として上越新幹線と東海道新幹線を直通運転することも技術的に可能になり、成田新幹線が文字通り全国新幹線網の一つとして生きる、というもの。

つまり、成田新幹線を新宿に乗り入れることでほかの新幹線網と接続し、新宿駅を全国新幹線網の一大拠点にしようという考えがあったのだ。

京葉線も新宿を目指す?

成田新幹線の東京駅予定地に駅が建設された京葉線も、新宿・三鷹方面への延伸構想がある。成田新幹線の新宿延伸構想と重なる部分だ。

2000年に運輸省(現・国土交通省)の運輸政策審議会が行った東京圏の鉄道基本計画についての答申(運輸政策審議会答申第18号)では、東京から新宿を経て三鷹までの地下新線を建設し、三鷹から立川まで中央線の複々線とつなげることになっている。

また、2016年の交通政策審議会答申でも、京葉線の東京―新宿―三鷹間延伸と中央線との接続は「地域の成長に応じた鉄道ネットワークの充実に資するプロジェクト」として盛り込まれている。「収支採算性に課題がある」と指摘されているものの、新宿延伸を念頭としていた成田新幹線の駅予定地に建設した駅であれば、新宿・三鷹への地下線を建設することは可能ではあるだろう。

かつて計画された成田新幹線のホーム予定地だった空間に設けられた京葉線東京駅ホーム。ほかの路線から遠く、そして深いこの場所が新幹線の駅用地として選ばれた背景には、将来の新宿延伸、そして全国新幹線網の充実とも関係する構想があったのだ。

小林 拓矢 フリーライター

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こばやし たくや / Takuya Kobayashi

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。在学時は鉄道研究会に在籍。鉄道・時事その他について執筆。著書は『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。また ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)に執筆参加。

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