「半分、青い。」はヒットの法則を無視していた 朝ドラ界の"都市伝説"に迫る
「毎日放送するドラマだからこそ視聴者は安心感を求めている。感情移入しやすい作品ほど“朝ドラあるある”ではないけど、いい意味でのマンネリがあります。
『水戸黄門』しかり、安定した人気を誇る長寿ドラマって、視聴者が求めていることを分かっているんです」(木俣さん)
どれだけ今が幸せでも、やがて訪れる大きなうねりに主人公が巻き込まれ、そして困難を跳ね返す……。その姿に視聴者は引き込まれていくというわけだ。
そんなヒロイン力を発揮して問題を解決してしまう、朝ドラ特有の展開もお約束。朝から小難しい物語を見たい人なんていないだろう。
「朝ドラらしさをキープするために、元気で明るいヒロインというのも、ヒットの法則のひとつ。主人公には、生まれたての子犬のようなピュアさが必要なんです」
と木俣さんが話すように、視聴者が親目線で見ることができるような女優、すなわちイメージが定着していない新人女優が起用されるのも納得の人選なのだ。
「朝ドラが抜群の安定感を誇るのは、習慣視聴によって支えられているからです。歴代の朝ドラが、冬季五輪で話題となった日本の女子団体パシュートのように一糸乱れぬ隊列を組んできたからこそ、視聴者は次回作も見てしまう。
逆に言えば、その法則を乱すことは習慣視聴が減少することを意味し、次回作の序盤の視聴率にまで影響を与えてしまうんです」(草場氏)
脚本家の私情が入ると危険信号
朝ドラには、“逆ヒットの法則”と呼べる禁断の果実があるという。
「ひとつは脚本家が私情を挟むこと。過去、『おしん』で大成功を収めた橋田壽賀子さんが、『春よ、来い』で自らの半生を描き失敗に終わりました。
また、『ふたりっ子』で向田邦子賞を受賞した大石静さんも、その後に自身をモデルにした『オードリー』でしっぺ返しを食らっています。私情を物語に散りばめると、名脚本家ですら朝ドラでは失敗するんです」(草場氏)