グーグル「AI秘書」、驚くべき進化の舞台裏 音声合成が可能にした人間そっくりの会話

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デュプレックスで生かされた音声合成の技術は、もう一つの新機能を生んだ。AIが人間の棋士に勝ったとして話題になった「アルファ碁」を手掛けるグーグル子会社のディープマインドが開発した音声合成システムを活用し、アシスタントが新たに男性、女性の6つの声を手に入れた。

アシスタントの声は、スタジオで録音した一定数のパターンから音声合成であらゆる言葉を話せるように開発されている。今回6つの声のほかに、”サプライズ”として米国の有名R&B歌手ジョン・レジェンドさんの声が加わることも発表された。アシスタントを通して有名人と疑似的に話すことが当たり前になるかもしれない。

このほか、発言のたびに「OK、グーグル」と言わなくても会話が続くようになり、複数のお願いを同時にしたりといった新機能も今後加わる。自然な会話を目指すアシスタントの開発は着実に進んできた。

今やグーグルアシスタントはさまざまなハードウエアで使えるようになっている(記者撮影)

アシスタントを日常生活で使おうとするとハードウエアは欠かせない。グーグルは近年さまざまな部門に散らばっていたハードウエアの事業部をまとめ、製品群を急速に広げている。2016年にはスマートスピーカーの「グーグルホーム」、スマホの「ピクセル」がそれぞれ米国で発売され、昨年はAIをフル活用できるノートパソコンやイヤフォン、小型カメラなども投入した。

アシスタントが握るハードウエアの命運

「ここ数年でAIや機械学習の能力が上がり、グーグルのさまざまなアプリとともにリッチな体験を提供できるようになった」。ハードウエア部門バイスプレジデントのスヴィア・コタリ氏は、製品群拡大の理由をそう語る。アシスタントはその体験の中心に置かれている。

グーグルが2016年に発売したスマートフォン「ピクセル」。日本発売はまだ未定だ(記者撮影)

アシスタント自体は大きな収入を生んでいない。だが洗練されれば、ハードウエアの魅力も高まる。コタリ氏は、「われわれはこのビジネスを大きくしたいという野望がある。ハードウエアは必ず、将来の収益成長の重要な部分を占めるようになる」と断言する。

グーグルアシスタントは今後も会話型AIの先頭を走っていけるのか。その成否は急成長を遂げるハードウエア事業、そしてグーグル全体の命運をも動かしそうだ。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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