注意!認知症の兆候は3つの違和感に表れる アルツハイマー病治療の世界的権威に聞く

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ブレデセン医師によると、脳にとっては、炎症が持続したり、栄養が不足したり、毒素などが入り込んだりすることが脅威になるという。脅威に曝された脳は、アミロイドベータというタンパク質を作って対処し、自身の脳細胞も破壊してダウンサイジングしてしまう。

アルツハイマー病とはいわば、脳が自らを守る「防衛プログラム」の結果であり、この防衛プログラムにより投下されたアミロイドベータは、敵を殺すと同時に国土を焦土と化す「ナパーム弾」のようなものである。

ベトナム戦争で使用され、その殺傷力が注目されたナパーム弾は、ナフサという主燃料剤に増粘剤を添加し、ゼリー状にして充填した油脂焼夷弾である。ベタベタとした内容物はあらゆる面に接着して長時間きわめて高温で燃焼し、周囲を広範に焼き尽くすことが知られている。

「ナパーム弾」と化したアミロイドベータが脳を蝕み、やがてアルツハイマー病の発症に至るのだ。

世界でいち早くアルツハイマー病の原因を突き止めたデール・ブレデセン医師(撮影:今井康一)

脳神経ネットワークを破壊に導く

アミロイドベータは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)の切断によって生成されるタンパク質であり、脳神経ネットワークを破壊に導く。一方で、APPが切断されると、脳に栄養を与えるタンパク質も生成される。

脳細胞を含め体全体の細胞は、生きていくために必要な情報をやり取りして、さまざまな活動を制御している。APPが脳を破壊する分子に切断されるか、脳を成育する分子に切断されるのかということも、細胞同士が伝えあう情報の中で、破壊と成育に関する情報の全体バランスによって決まる。ブレデセン医師ら研究グループがそれを解き明かした。

「このバランスを左右する要因が36もあるのです。若い時は、見事にいいバランスが維持されていますが、年齢とともにシナプスを破壊する方向に傾いていきます。このバランスを健康的に維持するためには、36の要因をすべて適正化しなくてはなりません」

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