米朝首脳会談、「情報機関が調整役」の危うさ 国務省とCIAの立場が逆転する異例の事態に

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そればかりか、米国も中心となって動いているのがやはり情報機関のCIA(中央情報局)のトップであるマイク・ポンペオ長官(4月26日、国務長官に就任)である。中央情報局は言うまでもなく世界でもっとも有名な情報機関であり、その活動は世界中で展開され、しばしば反米的政権の転覆にもかかわっている組織だ。

そのトップのポンペオ長官がトランプ大統領の信任を得て、米朝首脳会談に向けた調整を任されているのだ。ポンペオ氏は3月末に極秘に北朝鮮を訪問し、金正恩委員長と会談した。その後、北朝鮮側と接触をしているのはCIA幹部らが中心だという。相手はもちろん金英哲氏を中心とする統一戦線部であろう。

活発に動くCIAとは対照的に国務省はティラーソン長官が3月14日に突然、解任されてしまった。ティラーソン氏が長官に就任して1年余りたつが、北朝鮮問題担当者をはじめ国務省幹部の多くが空席のままで、機能不全状態が続いていた。トランプ大統領はティラーソン氏や国務省に北朝鮮問題で何も期待していなかったのである。

結局、米国、韓国、北朝鮮いずれの国も、水面下の接触や協議などは外交部門ではなく、情報機関が担っていることになる。これだけ大きな外交問題を当事国がいずれも外交の専門組織抜きで進めるというのは極めて珍しいことだ。

情報機関は政策を主張しないという不文律がある

情報機関というのは一般的な政府機関とは性格を異にしており、敵対国を中心に安全保障や軍事情報など相手が秘匿する情報をスパイや盗聴などさまざまな手段を使って集めて分析し、大統領ら政策決定者に報告することが任務の組織だ。組織の実態も活動内容などもベールに包まれた部分が多い不透明感の強い組織で、政策決定過程の透明性などが重視される民主主義国家においては異端児のような組織だが、米国だけでなく主要国はいずれもこの種の組織を持っている。

そして、情報機関の上げてくる情報と時の政権が決定する政策との間には明確な境界線が敷かれている。情報機関は客観的な情報を提供するが、それに基づき政策を主張してはならないことが不文律となっているのだ。もしも情報機関が政策内容に積極的に関与するなど政治的な目的や意図を持つと、情報の客観性が疑われることになり、為政者が判断を誤りかねないというのがその理由だ。

韓国で徐薫・国家情報院長が南北首脳会談に向けて積極的姿勢を見せた時、韓国の主要新聞の一つである中央日報は「徐氏が南北首脳会談のための水面下での接触を始めるのであれば、国家情報院の北朝鮮情報がわい曲されうる点を懸念せざるをえない。北朝鮮の核の脅威が深刻になっている時に、情報組織のトップが北朝鮮との交渉に集中すれば、国家情報院は院長の好みに合った北朝鮮情報に偏った報告をしかねない」と批判している。これは極めて妥当な分析と言える。

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