フランス人女性が男に「割り勘」を求める理由 本当のレディファーストとは何なのか

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くみ: それでも、声をかけられた女性としては、軽そうに見られたのかしら?と、ちょっと複雑な気持ちになるわね。知らない人に声をかけられても、絶対についていかないように、と子どもの頃から教えられるから、余計罪悪感が伴うのかも。

あとは、コミュニケーションの違いもありそう。フランスでは、たとえばレストランで隣のテーブルになった人と、ちょっと目が合ったら挨拶代わりにニコッとしたり、やってきたときや去り際に、「こんばんは」「よい夜を!」などと投げかけることもあるわね。

日本女性とフランス女性の違い

くみ:日本では、カウンター席で一緒になって、お店の人を介して話が弾むこともあるけれど、違うテーブル同士でこのように気軽に挨拶する、ということは、あまりない気がするの。知らない人には、基本的に話しかけないし、目も合わせないのが普通なんじゃないかしら。

割り勘の話も印象的だったけど、男女平等というからには、フランスでは逆に女性に求められることも多い気もするわ。私の両親の日本の友人などは、夫に不満があって慰謝料をある程度請求できても女性がその後食べていけないから、という理由で離婚を選択せず、表面的な結婚生活を続けている人も少なくないと聞いたわ。

一方、フランスで育った日本人女性は、フランスの中高時代、将来1人でも自活できる基盤を築くのが重要事項だと叩き込まれたと言っていた。女性側が受け身で養われる存在だと女性の立場も不安定で弱くなってしまうけれど、その状態から抜け出すには女性自身が誰にも頼らず生きていけるだけの力を身に付ける必要があるのよね。

エマニュエル:そう考えると、フランスでは男性は女性に接するときはレディファーストにおける女性を女性らしく扱う精神と、フェミニズム的な男女平等の精神をうまく混ぜ合わせることを理想とするのかな。

でもその程よいバランスを見つけるのは男性にとっては正直そんな簡単ではないんだよ。だから賛否ある #MeToo運動だけど、女性が告発して初めて男性側が気づかされることもあるわけで、これが理想的な男女の接し方をお互いが見つけることにつながると思うんだ。

佐々木 くみ 執筆家、イラストレーター

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ささき くみ / Kumi Sasaki

東京生まれの30代。フランス在住10年を超す。2017年10月に、エマニュエル・アルノーと共著で自らの体験をつづった『Tchikan(痴漢)』をフランスで出版。イラストも手掛けた。

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エマニュエル・アルノー 小説家

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Emmanuel Arnaud

1979年生まれ、パリ出身。2006年より児童文学、小説、エッセーをフランスにて出版。2017年にThierry Marchaisseより佐々木くみとの共著『Tchikan』を出版。2000年代に数年にわたり日本での滞在、および勤務経験を持つ。個人のサイトはこちら

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