武田薬品、試されるウェバー社長の経営手腕 巨額買収で国際化に前進
武田がグローバル化にかじを切ったのは、03年6月に創業家の武田国男氏の後任として長谷川氏が社長に就任して以降のこと。抗がん剤に強いミレニアムの買収に続き、11年9月には新興国への販路確保を狙ってスイスのナイコメッドを約1兆円で買い取った。しかし、社内の仕組みも、規模も、全ての面でさらなる国際化の必要性に直面する中、長谷川氏はクリストフ・ウェバー氏にバトンをつないだ。かつてナイコメッドと武田で働いていた経営コンサルタント、Peter Feldinger氏は、ウェバー社長が入社するまで「両社の統合は停滞していた」と述べ、ウェバー氏の登場が統合に大きな役割を果たしたと評価している。
社内取締役4人のうち3人が外国人、戦略策定を担うタケダ・エグゼクティブ・チーム(TET)は14人中11人が外国人だが、こうした数え方も今の武田では意味をなくしている。3月末で突然退社を発表した前CFO(最高財務責任者)のジェームス・キーホー氏の後任は、他社からの移籍ではなく、欧州カナダビジネスユニットのCFOを務めているコスタ・サロウコス氏を起用した。日本人か外国人かではなく、グローバルな武田の中で有能な人員を登用する仕組みができつつあると言える。
社内体制の国際化が進む一方、武田の企業規模は、国際的なメガファーマに大きく水をあけられている。2015年の大手製薬メーカーの売上高で武田は17位で、首位のファイザー<PFE.N>の3分の1の規模に過ぎない。今回、シャイアーを買収することでトップ10入りが実現する。
武田は、2025年に消化器系疾患でNO1、がんでトップ10、中枢神経系疾患領域と新興国で強固なプレゼンスを獲得することを中期目標に掲げている。UBS証券のアナリスト、関篤史氏は「中計実現のためにも、ある程度の規模のM&Aは必要になってくる」とみていた。
長期的取り組み
企業買収を多く手掛けたある企業のトップは、武田のシャイアー買収という「チャレンジ」を評価しながらも「買収は目的ではなく、そこがスタートライン。大きな買収だけに、株主や従業員、関係者に対し、納得できる成長戦略の説明ができるかが重要」と話す。
こうした懸念に対して、ウェバー氏と一緒に働いたことのある人物からは、同氏が急激な変化を説明する能力に長けており、グローバルに拡大しようとしている会社の理想的なリーダーだとの評価も聞かれる。
グローバル企業では、会社を渡り歩きながら自身のキャリアアップを図る経営者も少なくない。一方、ウェバー氏は、オーストラリアで1年勤務した後、英製薬大手のグラクソ・スミスクライン(GSK)<GSK.L>に入り、同社一筋に歩んできた。2014年に武田薬に移って4年が経過したが、2025年まで社長を務めると公言しており、武田を真の国際企業にすべく、長期的に取り組む姿勢だ。
(清水律子 取材協力:サム・ナッセイ 編集:北松克朗)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら